「がんと言われた日にすぐ主人に電話して、『ダメだった、やっぱりがんだった』と言ったら、向こうもすごく驚いていました。私はもう電話口で泣いてしまっているので、『あの、まぁ泣きたい気持ちはわかるけれども、とにかく自分と子どものために頑張って治そうよ』と声を掛けてもらったことは覚えています。
今のところは別に普通に生活できているので、かえってあまり優しくされると、ひょっとして家族にだけ『もう長くないんだよ』と言われているのではないかと疑ってしまうかもしれないですね。
主人にはいつも、『私はいつどうなるかわからない』としょっちゅう言っていますから、主人もきっと心の中では心配はしているのでしょうが、あまり深刻にはならず、私が言ったことに対してちゃかすほうなので、『じゃあ、それこそ生きているうちに何でもやっておいたほうがいいんじゃないか(笑)』と言いますね。だから私も『じゃ、好きにさせてもらうわ』という感じです。 」
「今でもとにかく頭の片隅にがんのことはあるのですね。そのがんが今は大丈夫だけれども、いつどうなるかは誰にもわかりません。今健康な人も、がんに気がついていないだけで、いつ“がん”と言われるか、それは誰も皆同じだと思うのですが。ただ本当に今でも、こう普通に喋っていても、どこか頭の片隅に“がん”という二文字がありますね。だから忘れた日はない、忘れたことはないという感じです。それが病気になる前と後でのいちばんの違いだと思います。
これはたぶん自分が死ぬまでずっと乗り切ることはきっとできないのではないかと思っています。たとえば骨が折れて、くっついて治りましたとか、そういう病気ではないですよね。特に乳がんの場合は、結構長い人だと術後20年ぐらいでも再発する、ゆっくり進行していくがんだということなので、私はきっと自分が死ぬまで乗り切れないのだろうなと思っています。」