「訪問をして、私達がいちばん関心を持って関わらせていただくのは、『心のケア』ということですけれども、いろいろな症状や辛さを持っていらしたりする方達がいらっしゃるので、そのご様子をみせていただいて、それが悪くなったり、悪くなる兆候があるような場合は、ご相談いただくということももちろんあります。
あとは生活全般がそのようなことに関わってきますので、その方の対人関係、衣食住の部分、お薬を飲むということももちろんですけれども、ご家族とのお付き合い、社会資源をどのように使っていらっしゃるか…。それから精神といっても、身体症状を持っていらっしゃる方もすごく多いので、身体症状への関わりもいたします。
いろんなお世話をするということはもちろんですけれども、暮らしていらっしゃる中で、頑張っていらっしゃるところを『頑張りましたね』とか、『ここのところ良くなりましたね』というように一緒に喜ぶ。『良かったですね、暮らしが続けられて。そういう暮らしを楽しまれて、いい事がありましたね』ということを見つけて喜ぶというのが、いちばんの仕事かなと思っています。」
- 日常生活の維持/生活技能の獲得・拡大
食生活・活動・整容・安全確保、等のモニタリングおよび技能の維持向上のためのケア - 対人関係の維持・構築
コミュニケーション能力の維持向上の援助、他者との関係性への援助 - 家族関係の調整
家族に対する援助、家族との関係性に関する援助 - 精神症状の悪化や増悪を防ぐ
症状のモニタリング、症状安定・改善のためのケア
服薬・通院継続のための関わり - 身体症状の発症や進行を防ぐ
身体症状のモニタリング、生活習慣に関する助言・指導、自己管理能力を高める援助 - ケアの連携
施設内外の関連職種との連携・ネットワーキング - 社会資源の活用
社会資源に関する情報提供、利用のための援助 - 対象者のエンパワメント
自己効力感を高める、コントロール感を高める、肯定的フィードバック
*(瀬戸屋希、萱間真美、宮本有紀他(2008):精神科訪問看護で提供されるケア内容 精神科訪問看護師へのインタビュー調査から。日本看護科学会誌,28(1),41-51より)
「それはケアをする側にとっての違いと、受ける側にとっての違いと2つあると思います。
先にケアを受けられる方達の違いを申しあげたいと思います。病棟にいる時は生活と切り離して、症状などがひどい時に入院されるのが病棟なので、主にそこのところに関わらせていただくので、『症状はどうですか?』とか、『どんなふうに苦しいですか?』とか、逆に『どんなふうに良くなりましたか?』とか、わりと単刀直入な病気への関わりが主になると思います。
でも、お家に帰られたら、病気というのはほんの一部でしかなくて、生活がまずあって、いろんな人との関わりがあって、その中の一部分としてお薬のことや症状のことなどがあると思うんですね。それなので、病院にいる時よりも範囲が広いと言いますか、お困りごと全般について伺って、その中でどんなふうに暮らしていかれているかというお話を伺うことになると思うんです。
で、看護師、ケアをする側にとっても同様で、私達は病院でのケアの訓練は受けているので、生活と切り離されたベッドがあって、患者さんがいらしてというところでの訓練は、わりと長く受けているのですが、お宅に伺って、その方が主(あるじ)でいらっしゃる空間で、何もかもその人が決めていかれる中で、そこにお邪魔をするという(ことで)、スタンスが変わると思うんですね。なので、それに慣れていない看護師は、けっこう戸惑うこともあります。私達はそこのところをしっかり訓練して、病棟にいる時と、ご自分のお家、お宅で、そこの主でいらっしゃる患者さんに関わる時は、私達も自然に変わるということ、それは1つ、私達のこれからの大きな課題になっているところなのですけれど。」