「そうですね、例えば、多くの訪問看護ステーションでは電話相談というのを受けていまして、24時間相談体制をとっているところが多いので、お電話をいただくことがあるんですね。それで、例えば緊急な時。とても具合が悪いとか、本当に不安だとか、そういうような時にお電話をいただくのはまったく当然のことです。そのために電話があるわけなので。
ですが、例えば、ゴミを捨てて欲しいとか、こういうことをして欲しいとか、思いつかれた時にぱぁっとそれを細かくお電話をいただいてしまうと、ケアする側も、例えば、がんで末期の方も訪問していて、それでそういうお電話をいただいた時にちょっと困ってしまうというようなこともあると思うんですね。それなので、そういう場合には、電話をたくさんしないといけないということは、それだけ普段の訪問の回数とか時間とかが足りないのかもしれないので、そういう時はまたご相談いただきたいというようなこと。
それから私達ができることと、限界がある部分、いろんな患者さんをお世話していますので、そのバランスというような部分も場所によって違うんですね。それなので、最初の契約の面接の時に、『ここまではさせていただきますが、こういったところはご自分で頑張っていただきたいです』というようなことを、しっかりと話し合わせていただいて、それで途中でいろいろ状況は変わりますので、その都度、言っていただいて、調整させていただけたら大変有り難いと思います。」
「ご家族と当事者の方が、同じことを同じ方向を向いて心配していらっしゃる時は、みんなで相談していただくのがいちばんいいので、一緒に支援させていただけるのですが、ちょっと方角が違っていたりとか、例えば、ご家族の方は当事者の方にこうあってほしいという思いが強くて、当事者の方はそれを聞くと緊張してしまうというようなことがある場合には、同席してみんなで『ワァーワァー』言うよりは、それぞれにお話をしたほうがいいような時もあると思うんですね。それなので、ご家族の方も不安でいっぱいなのは、よく分かるんですけれども、私達は、当事者の方の不安とご家族の方の不安と、一緒になって『ワァー』というふうになっていかないように、外から入らせていただくということがあります。なので、例えば時間を空けさせていただいてご家族のお話を伺う回、それから、当事者の方のお話を伺う回というふうに分ける時もあります。
それから、当事者の家族会などをご利用いただいて、家族の方同士でしか分かり合えない問題は、そちらでご利用いただくとか、いろんなことがあるかと思うんですけれども。やっぱり、当事者の方の病的体験をなくすのができないのと同じように、私どもご家族の方のお気持ちを本当に完全に分かることはできないかもしれないですけれども、ただ、孤立して家族だけがどんどん大変になっていくというところはお助けできることがあるかなとは思っています。」
「やっぱり人の家に行くということを忘れないようにすることかなと思います。
私達は、病院で働くように訓練されています。病院の環境というのは私達がコントロールして、医療関係者が守るという意識がありますので、なんとなく、人の家に行っても、こちらが『このほうがいいですよ』とか『あぁしてください』とかそういうような働きかけが病院で慣れているので、ついそういうふうにしてしまうところがあります。それについて当事者の方がとっても不快に思われて、『せっかく家に帰ってきたのにまた指図されて、いろいろガミガミ言われるんだったら、入院しているのと同じだ』というふうに不快な思いをされることも多いようなんですね。
それなので、私達は、訪問に伺う時には、『お宅の主(あるじ)というのは誰なのか?』ということをしっかり考える。それは少なくとも私達ではなくて、そういう暮らしを組み立てていただいて、その中で、医療の部分や服薬の部分や症状に関する部分をどんなふうに組み入れていっていただけるかということのご相談であって、指示ではないということがありますので、そこを注意するように気をつけたいと思っています。
ただやっぱり何十年も病院で働いて、それで地域でケアを始めると、なかなかそこの切り換えがうまくいかないスタッフも多いので、そういう時は、『ちょっとその言い方は変なんじゃないの?』と言っていただけると、ハッとすることがあるので、よろしいかなぁと思います。」