「33〜34(歳)頃ですね。仕事で行き詰まっていたのだと思うのですけど、ちょっと遠くから2〜3人の声が会話のように聞こえてきました。そういうものが何回か続いてですね。それでも、仕事はしなければいけないから、普通に仕事はしていました。
建築関係の仕事をしていました。仕上げ工事、シーリングという工事(外壁同士の隙間や外壁とサッシの隙間、また、サッシと窓ガラスの隙間などを埋める工事)をやっていたのです。
その頃はまだ声が聞こえるだけで、特に変わったことは……、変わったと言えば、それも変わったことかもしれませんけど、ま、声が聞こえるだけだったですね、その頃は、まだ。」
「(精神科を)受診したのは、もう55〜56か57(歳)ですかね。詳しくは憶えていないですけど、うちの社長が、どうもおかしいと、ちょっと普通じゃないということで、うちの弟のほうへ連絡が行きまして、『ちょっと受診をしたらどうだ』という話がきました。私は、最初は『そんなのは関係ない』という気持ちでいたのですけど、弟が私の元まで来てくれまして、それで受診することに決めました。
(A)病院に行きました。(その病院は)内科と精神の病気が主だと思うんですけどね。私も詳しくは知りませんけど。会社の社長がいろいろ調べてくれて、そこが一番近くていいのではないかということで、そこへ受診するように決めました。」
「そうですね、時々やはり声が聞こえたり……。で、だんだんだんだん年数が重なってくるうちに、ちょっと光が見えてきたとか、そういうことがありましたね。
星が光るような感じですよね。真っ暗闇に星がたくさんあって、その中に違う光で、黄色とか赤とか青が光って見えるのですよね。それとか、飛行機が、夜中、飛んでいると、ランプがついているのですけど、そのランプが飛行機よりも遅く、飛んだ後に光が遅く見えてみたり、そういうような症状が出てきました。自分としては、まさかそれが病気とは思えなかったものですから、普通にしていたのですけど。
そのうちにだんだんだんだん声が大きくなりまして、部屋にいても、部屋の中が、『えらい響いてるなぁ』というような感じで、マイクも使っていないのにマイクを使っているような大きな声が出ていましたね。」
「そうですね。最初のうちはきちんと行っていたのですけど、だんだんだんだん声が聞こえる回数が増えているうちに、一度だけ、すっぽかしたというか、遅刻というんですかね、そうしまして。その時にやはり、私の上司である社長が、『ちょっと様子がおかしい、今までそんなことなかったのにどうしてそんなふうになったんかぁ』ということで、個室に呼ばれていろいろ話をしていたのです。
その時も私のほうは『全然そんなの病気じゃないよ』みたいな感じで、普通にしていたのですけど、やはり狭い部屋だから、どうしても声が響いて、『ああ、やっぱり違うんかなぁ』という思いはありました。でも、まさか、そういう病気というか、そういう世界のことを全然知りませんからね。普通にはしていましたけど、第三者から見ればちょっとおかしいと見られたというか、そういう感じじゃないかなぁと思います。」
「A先生ですけど、弟と一緒に部屋の中に入ったのですけどね、とにかく会話が進まなくて。それで、『とにかく私の言うことを、取りあえず聞いてください』と言うのだけど、『いやそうじゃないそうじゃない』と(先生は)全然話を聞いてくれなくて……。
そんな話を30分ぐらいしている間に、先生から特になかったのですけど、その時に(は)。あとから分かったのですけど、紙には、なんて(言う)のですかね、『妄想的な所がちょっとある』というふうには言われていたのですけどね。だから本人は、そういう世界は全然知りませんので、何を言われても、『普通なのになぁ』と、それしか頭になかったですね。
薬はもらったのですけど、なんか毒のついたような名前だったので、ちょっとこれは飲んだら余計悪くなるのではないかなと思って、飲まなかったのですよね。
その時は入院しないで、そのまま家に帰ったのです。帰ってからしばらくして、私の場合は、保護されまして、入院するようになったのですけど。自分では気づかなかったのですけど、『ちょっとは大きな声が出てるかなぁ』という感じだったのですけどね、それが、第三者にとってみれば、普通ではないということで、たぶん通報されたのではないかなと思います。
57(歳)の時ですね。(受診後)1週間かそこらぐらいですぐ保護されてそのまま入院しました。それはBという田舎(にある病院)に入院しました。完全な精神科ですね。入院は2か月しました。」
「退院してからですね。1か月前後だと思うのですけどね。だけど、そういう病名がどういうものなのかも全然分かりませんでしたからね。ただ、声が聞こえてきたり、いろんな現象というのですか、そういうのがあったから、『そうなのかなぁ』という感じですね。
まあ、主治医の先生から言われたのですけどね。『あまり深く考えなくてもいいから』ということで、そういう病名を言われましたね。(私も)特に考えなかったですね。」