「一歩踏み出していただく勇気。例えば、引きこもって外に出るのも怖いという方は、新聞を取りに行く時だけでもいいから一歩外へ出て外の空気を吸ってみる。朝の光を浴びてみる。それから始めてもいいと思うのです。とにかく一歩家から出ることを心がけていっていただきたいなと思います。
(それから)1つでもいいです、何か楽しみを作ってほしいです。もし、どこかへ出た時に、共通の趣味を持つ子がいれば輪が広がります。例えば私が行ったサロンなどでも、たまたまポツポツといた子が、少女漫画が好きだという共通点があって、それから仲良くなって輪が広がったということもありますので、好みなものを、何か1つ見つけてほしいです。」
「あまり『頑張れ!頑張れ!』と焚きつけるようなことは控えていただきたいということがあります。そうすると余計しぼんでしまう時もありますし、それに、出たい時もあると思うのです。自分から、あそこに行きたい、ここに行きたいと。そういう時は『あんたは障害持っているので、恥ずかしいから、表に出るな』とか、そういうふうに世間からシャットアウトしてしまうような扱い方も良くないと思います。
ごく自然に、普通の子と言ったらなんですけれども、一人の人間として、『行くんやったら、そこ行っといで』と。危ないことをする子じゃなかったらの話ですけれど。それが包丁を持って、騒ぎまくるような子では困りますけれども。自分の意志であそこに行きたいと言うのだったら、本屋さんやったら本屋さんに行っといでとか、駅に行って、写真撮りたいと言ったら、じゃあ、撮っておいでとか、そういったことで出していただくことも必要だと思います。
だからやはり、世間体をあまり気にしすぎないほうがいいと思うのです。世間体を気にするとどうしても、うちの子は障害児だからとか、うちの子は障害を持っているので恥ずかしいからとか、そうしてしまうとその子は余計傷つくのですよ。自分は人とは違うんだとか、自分はやはりおかしいんだとか思いがちなので、世間体を気にせずに、できることならやりたいことをやらせてあげてほしいというのが、私の希望です。」
「本当に親身になって、患者のことを思ってくださる先生、話をよく聞いてくださって理解してくれる先生、5分間診療ではなくて、その子の本音を聞き出してくれる先生、そういう先生がいいですね。例えば、病院に花瓶があると、『誰々さん、今日はこの花きれいでしょ?今日の気分はいかがですか』といった聞き方をするとか……、ちょっとした心遣いが必要だと思います。
あとは、お薬をあまりたくさん出し過ぎないようにしていただきたい。副作用副作用でボトっと落ちてしまうことを、私も経験しておりますので。そうではなくて最低限の薬で治していく、それをずっと続けていく、そういった先生がいちばんいいと思います。」
「こんな私で役に立たせていただけるならと思った面もありますし……、それは、お話をいただいた時から思ったのですけれども。」