統合失調症と向き合う

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小松崎隆さん
小松崎隆さん
(こまつざき たかし)
1962年生まれの54歳(収録時)。高校2年生の時に発症。大学を卒業し、就労するが退職。入院体験は2回。ヘルパー2級の資格を有し、現在は身体障害者の介護のアルバイトをしている。実父と同居し、家事の一部を担っている。自身の希望で週に一度受診。
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8病気の認識
Q.自身の病気をどのように受け止めていますか

「初めに入院した病院は、本当に、自分としては緊急避難みたいな感じで入っていたので、やはりいろいろ学んだというのは、2度目の入院の時で、『あ、自分は病気なんだな』という自覚がなんかストンと腑に落ちたというか。自分は、不安とかが特に強いから、その症状が出ているのではなくて、完全に、年金は平成9年ぐらいからもらっているわけですけど、そういう意識を持ったというのは、やはり……、んんー、でもまあ難しいな、難しいですね。病識があると言えばあるし、ないと言えばないという状態で仕事をしていたので。

だから障害(者)手帳は持っていたので、障害者という意識はあったのだけれども、それが本物になったかというのがあって。だから退院してきてからはもう障害者手帳割引にできるところは何でも使うという感じなりましたし。幻聴というか、他のことを言っているかもしれないのですけども、やはり、『え、障害者?』とかそういうふうに聞こえる時もずいぶんあるのですよ。だけどもそれが聞こえるということは、聞き流すわけにもいかないのだけれども、んんー、今ちょっといろいろ模索中という感じですかね。

今のままでいいかどうかは分からないけれども、とにかく目の前のことを一つずつやっていくしかないという気持ちにはなれましたね。前は、『将来どうしよう』とかそういうことも考えたりしたのですけども、今はほんと、できることから手をつけていって。ま、将来的なビジョンというのは大事だと思うのですけども、やはり。ヘルパーだからそういうことをしたりもするのですけども、家の片づけとかでもやろうかな、やるのやめようかと迷う時ってよくあるじゃないですか。そういう時、そう思ったのだからまあやってしまおうというふうにやって片付けていったほうが、結局自分の気持ちもスッキリするような気がするのですよね、やはり。

それは、精神保健福祉士の方に習ったことなのですけども、自己覚知。自分で自分を、己を知るということですかね。己を知るということは、その援助職に限らずなんにしてもすごく重要なことで、そういう意味では、統合失調症にむしろなって良かったかなというふうには思っていますね、やはり。

自己覚知とともに、基本的に自分で自分を好きになることとか、自分で自分を許すこととか、人を許すこととか。なんて言ったらいいのでしょうね。だから、あれもだめなんだな、これもだめなんだなというよりも、あ、こんないいところがある、ここもいいところがあるとか、ここはいいとこだなとか、ここはダメだけどこれはいいねとか……、ちょっと自己覚知から離れますけど、そういう意識みたいなものも大事だし。」

Q.現在はどのような病状ですか

「安定はしていないですね。街に出れば、人の噂話とかが聞こえてくる。それは、前に比べればだいぶ楽になって、『結構みんな勝手なことをしゃべるもんだよな』というふうに思えるようになってきたのですけども、どうしてもやはり幻聴はあるのですよ。だから、みなさんに知ってもらいたいのは、幻聴があるけれども、それとつき合いつつやっていくということが大事で、仕事にしても何にしても。

今の仕事場というのは、ほんとに上司とか同僚というか、元同じ職場にいた人が立ち上げたようなものですけども、その人がすごく気のつく人で、『疲れた時はいつでも言っていいから』ということを言ってくださるので、単発的に入って、まあ、本当に短い仕事ですけども、体調が悪い時はいいですかとか、お願いしますという感じで頼むと、ああじゃあ、そこを変えますからという感じで変えてくれるので、なかなか今のスタンスは崩せないなというのがあって……。

一昨年か去年にかけて、精神保健福祉士のコースに通っていたのです。でも実習がフルタイムでやらなければいけないので、それが辛くて。あとレポートとかもなかなか進まなかったし、こだわりすぎてしまって進まなかったりして、んんー、これは退学したほうがいいかなぁと思って退学したのですけども。」

Q.現在、服用している薬を教えてください

「だいたいジェネリックになっているので、よく分からないですけども、昔の名前としては、アーテンセルシン、主なものとしては、ルーランという薬で、それが抗精神病薬で主になっているもの。あと、今から言うのはそれをもらうようになってから良くなってきたというやつですけども、PZC(ピーゼットシー)があって、それをもらっていて、頓服で飲むようになって。

ただそれでもやはりまだ具合が悪いので、昼にルーランとセルシンかな、あとPZCを出してもらうようにして、どんどん薬が増えてしまうのですけども。あと漢方薬で、抑肝散(ヨクカンサン)、そのあとなんかつく名前があるのですけども、加陳皮半夏(カチンピハンゲ)とかいうものがあるのですけど、それは緊張とかを和らげるのに効くやつで、それを飲んでいるのと、あともう一つ、柴胡加竜骨牡蛎湯(サイコカリュウコツボレイトウ)というのを飲んでいるのですけども、それはちょっと効いているのか効かないのか、他にお守りみたいな感じで飲んだりしているのですけども。

だから薬の量としてはすごく多いですね。だから、ちょっと興味があって、どうしようかと迷った時に、半年ぐらい前ですかね、A型の就労支援事業所に行ったことがあるのですけれども、やはり薬の量が多いからだと思うのですけども、『ちょっと』という感じで断られてしまったことがあるのですけれども。」

アーテン(トリヘキシフェニジル塩酸塩):抗パーキンソン病薬
セルシン(ジアゼパム):抗不安薬
ルーラン(塩酸ペロスピロン水和物):非定型抗精神病薬
ピーゼットシー(ペルフェナジン):抗精神病薬
抑肝散(ヨクカンサン):漢方薬。神経の高ぶりを抑えたり、筋肉の“こわばり”や“つっぱり”を緩める。
加陳皮半夏(カチンピハンゲ):漢方薬。自律神経を安定させる。
柴胡加竜骨牡蛎湯(サイコカリュウコツボレイトウ):漢方薬。神経の高ぶりをしずめて、心と体を穏やかにする。
就労継続支援(A型)事業所:一般企業等での就労が困難な人に、働く場を提供するとともに、知識および能力の向上のために必要な訓練を行う事業所で、A型とB型があり、A型は雇用型(雇用契約を交わす)、B型は非雇用型(雇用契約を交わさない)事業所のこと。
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