統合失調症と向き合う

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堤 敏行さん
堤 敏行さん
(つつみ としゆき)
1962年(昭和37年)生まれの55歳(収録時)。26歳で特別養護老人ホームの介護職として働いていた時に発症。入院体験は2回。現在はデイケアなどに通いながら、無理の無い範囲で介護のボランティア(傾聴、オセロゲームの相手など)を行っている。母親と二人暮らし。
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2精神科受診の経緯
Q.精神科受診時にどのような症状が出たのでしょうか

「26(歳)。平成元年、昭和64年(1989年)の1月4日、当時、特別養護老人ホームに勤めていたのですが、その夜勤明けで、ちょっと離れた所から、車(を)乗り上げて、歩いて、30分ぐらいかかるのかな、冬場歩いて、意識朦朧として勤め先の老人ホームまで行って、老人ホームの前で、太陽を飲み込んだ感覚というのを味わって、それで服を脱いでしまったというか。それで、みんな周りがびっくりして……。

その老人ホームから職員の人が出て来て、『どうした、どうした』と言って。で、その時は実家ではなくてアパートに住んでいたので、アパートに帰って。で、実家から母親が来て『どうしたんだ、どうしたんだ』と言って、とりあえずその日は実家に帰ったというか……。」

Q.症状が出る前に兆候のようなものはありましたか

「今考えると、症状が出る前の、昭和天皇が崩御される前に、毎日テレビで血圧とかなんか放送していましたよね。あれは、今思うと自分のことを言っているような感覚があったなと思って。太陽を飲み込む感覚になる以前は、もう、混乱状態かな。それで一気にその1月4日に、平成元年、昭和64年の1月4日に、もう行動が出てしまったというか。その辺のことはハッキリ憶えていないですけど、その行動だけは憶えていて。

介護職です。夜勤もあったし、あと、宗教にかぶれたというか……。正直言うと、何ていうか……、親父が、頑固。昔の親父で、ちょっと機嫌が悪いと手を出すみたいな。それでなんか、家を幸せにしたいと思って、宗教にかぶれたのと、それでまあ、家にいられなくなったので、宗教をやるには。それでアパートを借りて、一人暮らししたら、食事も満足に食べていない。で、夜勤もある、その宗教にも通っていたというか、いろんなことが重なって……。」

Q.受診した病院は?

「精神科です。地元の病院と、ちょっと離れた病院2箇所に行って。で、結局、地元の病院に通院することになって。

もう29年ぐらい前だから、病院自体が古いというイメージが……。人里離れたところにあるというイメージがあって、で、薄暗いというか。

1つは、新しかったけど、もう30年経ったからもうそんなに新しいのも古くなっているのですけど、今は。その当時の古いところはもう古くて木造でなんていうか、びっくりしたですけど。地元にそういう病院があることを知らなかったというか、病気なって、『あ、精神科の病院があるんだな』と分かりましたけど。」

Q.通院先はずっと同じですか

「地元の古いほうで、古いほうは系列があって、地元ともうちょっと離れたところにちょっと大きな病院があって系列の。で、地元で診察を受けていた先生が転勤になって、ちょっと離れた系列の大きな病院に。それで、その先生に付いていって、その大きな病院に通院するようになったのです。

(受診先は)母親が『その先生がいいんじゃないか』と言って。で、その先生が転勤するので、その大きなほうの代わりにそっちのほうに行けばと言われて。でもその先生もなんか途中でいなくなったというか、知らないうちに。どういうあれ(理由)か分からないけど。

(その後は)先生はいろいろあって、何人か先生(主治医は)変わっています。」

Q.医師から診断名を聞きましたか

「直接は聞かなかったのですよ、病名とかは。ただ『薬を飲んでください』と言われて。あの当時、結構いっぱい薬が出たので、薬疹というのが出て、ブツブツっと。自分では、その時はまだ、統合失調症というか、あの頃は精神分裂病と言っていましたけど、まだ、病名が分かるのはずっとあとで、その頃はまだ心因性反応と言われていたから、そうだと思っていたので。」

Q.病名を知ったのはいつ頃ですか

「障害年金の診断書を見た時ですね、30代の。30何歳だろ、35〜36(歳)だろうか。初めて診断書の中身を見たのですよ、年金の。そしたら『精神分裂病』と書いてあって、『ああそうなのか』とショックを受けた。心因性反応と書いてあったのでそう思い込んで(いた)。でも心因性反応でもそれなのですよね。知らなかったけど。

(自分で)調べるというか、あまり関わりって(いうのは)、日々の(こと)で精一杯だったかな。で、パソコンとかもできなかったので、調べる手立て(てはず)がなかったというか。あと、ただ出された薬を飲んでいるという感じで。薬だけは、ちゃんと飲んでいたのですよね。やめたりしなくて。

病気のことの具体的なこと……、でも、自分で経験したから、ああいう行動をしてしまったのはそういう病気だからしたんだなと思って。太陽を飲み込んだという感覚も、普通だったら感じないわけだけど、『あ、病気だからそういうふうに感じたんだ』と。今考えるとなおさらそう思えるというか。なぜか不思議だったのですよね、当時は、なんでそんな感覚(が)。現実だと思っていたね、当時はね、太陽を飲み込んだというのが。

冬の太陽なんですよ。冬だから、鉛色なんだよ、空が。だから、おぼろな感じなのです、太陽。それがこう、口から入っていったような感覚で、熱くはないのだけど、なぜかその時、服を脱いだというか。だから、ま、いろいろ経験を話す機会はあったのですけど、そういう話は……。で、その時は、なぜか分からなかったけど、あとになって、その病気だったからそういう感覚あったんだなと(いう)か。」

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