6日本における家族支援
Q.日本での家族支援の動きを教えてください
「やっているような格好にはなっているのだけど……。要するに、保護義務者としての家族があった。患者を監督する義務ね。それから治療を受けさせる義務だとか、自傷他害(を)防止する義務だとかを家族に課していましたので、とんでもない話ですよね。行政だとか専門的なサービスでやらなければいけない課題をみんな家族に責任を追わせて、それで家族のせいにしていたという精神障害者の1900年(明治33年)の(精神病者)監護法で、それを引き継いだ精神衛生法(昭和26年)。
そういう保護義務者としての、これはあまりにもひどいではないかというので、義務というのは外すと。でも中身はあまり大した変化はなかったのですね。保護義務者を保護者にして、今、保護者制度も廃止しようと。しかし、医療保護入院は残っていて、自傷他害防止義務も外しますと言うのですけど、極端なものを外していこうという動きで、まあ、改善は改善かもしれないのだけど。
措置入院が解除された時に、それを受ける家族に(の)相談に乗る義務を保健所に課したり、若干の前進はあるのですが、今、イギリスで申しあげたような家族を本気で支えようという国家的な意図はまったく見えない。だから、『本格的に家族を支えよう』と家族会が叫んでいるのだけども、残念ながら、日本でも家族支援が前進しているというふうに見てとれないですねえ。このままでは、家族を、そのことは即ち患者さんを支えることにもならないし社会を支えることにもならないし、大きい問題です。残念ですが。」
精神病者監護法:治安要請の強い「私宅監置」を中心とした立法。明治33年施行。
精神衛生法:都道府県に精神科病院の設置義務。精神衛生相談所、精神衛生鑑定医、処置入院、保護者の同意による入院、私宅監置の廃止などを定めた。昭和25年施行。昭和30年〜40年に精神科病院が大増設された。