「(仕事中)体調は常に悪かったみたいなんです、幻聴があったり。でもやっぱり食べていけないので、一生懸命その辺はこらえてこらえて、具合が悪くなったらトイレにかけこんで、我慢したり、そういうことを繰り返していたようです。でもなんとか、職場では周りの方に、問題を起こすというまでにはいかずして、うまくしのいでいたみたいなんです。でも、その反動が家庭内で出ていたのではなかろうかと、私はちょっとは感じますね。
(職場には)まるっきり隠していました。なので、その社会福祉の32条(精神保健福祉法第32条:通院している患者の医療費を軽減する制度。平成18年より、障害者自立支援法第53条に変わった)でしたか、今の自立支援法ではなくちょっと前のときの法律でお薬のお金が免除されるというのがあったんですけど、それを利用することによって、保険証とかに分かるような印が入るんじゃないかということをすごく恐れていましたね。会社にばれちゃったらどうしようって。」
「(暴力的になるのは)幸いにも家族の中だけだったんですよね。もしご近所とか周りで何かするようなことがあればすぐ警察に連絡したと思うんですけど。こんなに長く大変な生活になっちゃったのは、私かたまにいる父に対して母は暴力的にはなるけどそれ以外ではありませんでしたね。それはほんとに良かったと思っています。一番はじめの発症のときにご近所に飛び込んだりした以外は、まったくなくて済んできているんですよね。だから逆に気づかれないで放置し続けてしまったという結果にもなってしまったんですけれど。」
「私、当時はそんなにものすごく母を観察し続けていたわけではないのですけど、母の体調が悪くなっていたのは、今いろんなことを勉強した私が振り返って思うと、たぶんストレスがかかるようなイベントがあったはずなんですよ。例えば、父が転職をしたとか引っ越しがあったとか。で、母のおかしくなるときって、たいがい、ずっと同じ部屋にいませんよね、あれなんかへんな笑い声聞こえるぞって思って行ったら、もうすごい形相が変わって暴れていて、げらげら笑っていたとか、学校から帰ってくるともうおかしな母が部屋に座っていたとか。結構うちは変動が激しいような気はしますけどね。前日は普通の母だったのに、次の日、学校から帰ると、ちょっと様子がおかしくなっていたり。
それがほんとに、憑依(ひょうい)されたような、よくテレビとかで‘いたこ’さんとかが霊おろしとかしてるじゃないですか。乗っ取られたような雰囲気の言動のときがあったんで、子どもだったからこれは霊が乗り移っているに違いないとすごく思っていました。で、たまたまうちの母は、10月に体調の悪いことが多かったんですよ。神無月だからだって(私は)勝手に思っていて、神様が出雲に行っちゃうから今は霊を抑えていられない、みたいな。だから怖いっていうよりは霊がついたみたいだと、真剣に思っていたときがありました。」