統合失調症と向き合う

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堀 澄清さん
堀 澄清さん
(ほり すみきよ)
1937年生まれ、75歳。18歳で精神科を受診し、その後、10回の入院を経験する。自分の病気を知るために様々な書物を読んだという。現在は、社会福祉サービスを上手に利用しながら一人暮らしをしており、隣の家には女性の友達がいて、穏やかな日々を送っている。
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6書物からの学び
Q.書物を読むようになったのはなぜですか

「自分のことが分からないから、どうしたらいいのか。薬を飲む以外に療養の方法が絶対あるだろうということで…。僕が読んだ古い本は、精神分裂病の場合、大枠では“荒廃”という、行き着く先はそういうものが多くて。だいぶ読んだあとなんですけど、オイゲン・ブロイラー(Eugen Bleuler)の本の完訳本を見つけて、100年前なんですけど。そういうようなことで、たくさん(本を)読んでいるうちに、少しずつ分かって、幻聴のことも妄想のことなどでも種類があるだとか、自分ではそのうちのこういうスタイルだなんていうことが。」

オイゲン・ブロイラー:スイスの精神科医。1857年〜1939年。シゾフレニー (Schizophrenie統合失調症、旧訳は精神分裂病)という用語を創設した。

Q.書物を読むことは役に立ちましたか

「患者同士は、1つ目の病院、2つ目の病院でも、他人の治療、インシュリン(療法)などを受けている状況は、この目で見て知ってはいますけど、幻聴や妄想の話というのは患者同士ではしませんね。3つ目の病院でも、基本的にしません。だから、みんな、なんて言うか、片っ端から本を読むことで少しずつ分かっていって、本当に、今の精神医学の水準では、心底分かるようになったのは10数年前ぐらいからです。それまでは、『ひょっとしたら治るかもしれない、ひょっとしたら治るかもしれない』という気持ちは、かすかにありました。

今は、なんて言うか、多くの精神医学の、脳の局所部分が幻聴に関係する、妄想はここに関係するということが書いてありますけど、そういう考え方、僕、どうしても受け入れることができなくて…。感情の部分も心の部分も魂の部分もひっくるめて脳全体、それから肉体全体、内臓感覚も皮膚感覚も全部ひっくるめて関係している、総合的なものだと思っていますから。今の精神医学、生物学的精神医学のある所にだけ原因を求めて、細分化して細分化して病気の本体を突き止めようという考え方に、基本的には僕はまったくと言ってもいいぐらい与(くみ)していません。

もっと総合的なもので、すべてに関係しているだろうというふうに思って、なんて言うか人間の本質を追求しようとしている。本であれば、基本的に、自然科学も社会科学も人文科学も、どういう分野の本でも、手当たり次第に何でも読むようにして、自分の療養を組み立てています。だから、小さな、部分的にこの知識が役立ったという療養の仕方は、今でも周りにも多いし、ご家族でも、こういうことが役立ったというと、すぐそれに飛びつくような人、周りに多いんですけど、そういうふうになればなるほど振り回されて、自分の安定を損なうというふうに僕には映るので、非常に療養の仕方はまずいというか…。

僕はそういう意味では、人間はもっと総合的に、すべての知識を総動員しても不完全なもの、知識はどんなに寄せ集めても。だけど、人間そのものが生きた生命体ですから、なんらかの意味で総合で調和しているから生きているわけで、そういう意味では、知識はどこまで行っても不完全なものだという向き合い方をしないと、振り回される療養から脱却することはできないのではないか。そういう思いは拭い去ることができないというのは、今の僕の到達している、なんて言うか、病気との向き合い方です。」

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