がんと向き合う

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●大腸がんの標準的治療
内視鏡治療

内視鏡治療が奨められるのは、がんが粘膜に留まっているか、粘膜下層に浸潤していたとしてもその浸潤が浅いもの、加えて、大きさがだいたい2cmまで(内視鏡で一度に切り取れる大きさ)のものです。

内視鏡でがんを切り取る場合、スネアというものを使います。スネアの大きさがだいたい2cmなので、切り取れるがんの大きさも約2cmということになります。専門病院、ないしは非常に慣れた先生方であれば、もう少し大きいものでも切り取ることができる場合があります。

内視鏡治療には、ポリペクトミー内視鏡的粘膜切除術(EMR)の2種類があります。

図4-1
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ポリペクトミーというのは、キノコ状の形をしたポリープ、ないしはがんに対して行う治療法です(右図)。スネアというワイヤを内視鏡から出して、キノコの茎にあたるところにそのワイヤをかけます。そしてスネアを締めつけて、電流を流して焼き切ります。

その後はスネアの代わりに、ものをつかむ鉗子を内視鏡の中を通して出して、切り取ったポリープをつかんで内視鏡と一緒に取り出します。

EMRは茎のない平らながん、ないしは腺腫と言われるものに対して行う治療法です。茎がないため、そのままではスネアが引っ掛かりません。そこで、がんの根元に生理食塩水などの液体を注入して盛り上げて、人工的に茎を作ります。そして、盛り上がったところにスネアをかけて、締めつけて電気で焼き切ります。こちらも一度に切り取れる大きさは2cmぐらいまでです。

Q.内視鏡治療のよい点は何ですか?

内視鏡治療では、肛門から内視鏡を入れてがんを切り取るので、体に傷がつきません。そこが手術といちばん違う点です。また、体に傷がついて痛い思いをしたりしないので、外来で治療することもできます。実際、外来で行っている施設も多いようです。ですから、患者さんの負担が少ないという点で便利な治療法と言えます。

ただし、内視鏡治療ができるのは、粘膜ないしは粘膜下層の浅いところまでに浸潤したがんで、大きさが2cmくらいまでのものです。ですから、進行したがんや、その他多くのがんでは、やはり手術が必要になります。また、電気で焼き切るため、腸の壁にかなりの電流が通ることになり、薄い腸の壁に穴があいたり、出血したりすることがあります。ですから内視鏡治療を行った場合は、1週間ぐらいは遠出をしないで安静にしていることが必要です。

内視鏡治療のもうひとつの問題点は、がんをきれいに取りきることができない場合があることです。大きさが2cm以上のものでは取り残しが出てしまうことがあります。また、治療前には浅いと判断していたものが、予想以上に深く浸潤していた場合は、がんが取り残されてしまうことがあります。

内視鏡治療後の病理検査

図4-2
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内視鏡治療でがんを切り取って、それで治療は終わり、ということではありません。
内視鏡で切り取られたがんをまず顕微鏡で検査します。がんがきれいに取りきれているかどうか、リンパ管や血管のなかにがんが入っていないかどうか、などを顕微鏡で調べます。病理検査の結果、がんが取り残されている可能性がある、リンパ管や血管のなかに入っているという場合は、リンパ節に転移している可能性がありますので、患者さんと相談しながら次の治療、つまり手術をするかどうかを決めます。これらの要素がなく、リンパ節に転移している可能性がほとんど無いと判断されれば、そこではじめて、内視鏡治療でそのがんの治療は完了ということになります(上図)。

Q.内視鏡治療で済むような小さいがんはどうすれば見つかるのでしょうか?

内視鏡で治療が終わってしまうがんは、早期がんといって早い段階のがんです。このようながんはまずほとんど症状がありません。ではどうやって見つけるかというと、普通は便の中に血が混じっているかどうかを調べる便潜血反応検査というものを行います。もしその結果が陽性で、血が混じっているという結果が出れば、精密検査として大腸内視鏡検査を行います。このようにして早い段階のがんを見つけていきます。40歳を過ぎたら便潜血反応検査を受けたほうがいいと思います。

Q.便に血が混じっているかどうか、自分で見てわかるものでしょうか?

たいていは目で見ることはできません。病院へ行けば便潜血反応検査の検査キットがあります。この検査では通常、2日間の便を調べます。1回め(1日の便)だけではやはり見逃しがありますので、日を改めてもう一度(2回め)便の中に血が入っているかどうかを調べます。

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