「リンパ節のいくつかにがん細胞が見つかっていて、『転移の心配もあるので抗がん剤治療をしましょう』ということで、8月から半年間、抗がん剤治療をしました。その抗がん剤も結構高い薬なのです。『これは1粒2500円して、あなたはこれを5粒飲むのだから、お金に計算するといいお薬ですよ』と言われたその薬を、5日飲んで2日休むというのを半年やりました。その薬の影響もあり、下痢や吐き気、口内炎もできたりしました。
抗がん剤治療とその直腸のことも重なって、その1年間は地獄ではないけれど、泣いて暮らしていました。だけど先生が『月日、月日』と言われた言葉をたよりに、何しろ月日が解決してくれる・・・と常に思っていて、2年ぐらいしてからだんだん楽になりました。」
「抗がん剤を5日飲んで2日休むのですが、2日休んでいる間は、1日目はだめでも2日目は吐き気もないし、本当に調子がいいのです。でもまた飲み始めると、気持ちが悪いのと吐き気と、便も余計に軟らかくなってしまうのです。だからその薬を飲んでいる半年間は、術後の経過と抗がん剤とが一緒になっていて、それはたいへんでした。
先生に『もう我慢できない、口内炎がひどくなっちゃうんです』と言っても、薬を出してくれるわけではなく、『じゃ胃の薬とかいろんな薬を併用して飲みなさい』と言うのです。私はプロポリスの液体を口のなかに入れて、はじめはパーッと白い穂が吹いたみたいに、渋柿を与えたみたいに真っ白になるのですが、時間が経つとすーっとその口内炎が治まるのです。プロポリスの会社の宣伝みたいだけれど、そうではなくて、口内炎がひどくなってしまうときは自分でプロポリスの液を口のなかに入れて、そして治めていました。もう誰に教えてもらうわけでもなく、やはり人間はそういう切ないたいへんなときには、いろんな知恵が湧いてくるのです。
先生に言うと『それはもう薬の副作用ですから』と言うだけで、プロポリスの話をしても先生はあまりそれで治ったと思いたくないのか、『あぁ・・』と、聞くような気持ちではないみたいでした。ですから、それは自分が切ないから自分でそういうふうにするということですよね。」
「手の節々が真っ黒になりました。ちょうど第一関節でしょうか。最初は知らないで、『こんなに真っ黒になっちゃった・・・』と思いながら手にホワイトパックをしたりして、『なんでなったのかな』と思って先生に言うと、『それは薬の副作用です』と言うのです。そういう知らないところで副作用はいろいろ出るというのと、吐き気や、便が軟らかくなるのも『その薬のせい』と言うので、私の場合は便が軟らかくなると『なおさらたいへんなのです』と言うと、『じゃあ、1粒ずつ量を減らしてもいいですよ』と言われました。それは電話でお話ししたときに、『1日5錠を4錠にして様子をみてください』と言われて調節しましたけど、とりあえず先生は『半年飲みなさい』ということでした。飲みながらとにかく転移を心配してくれていたので、血液検査とエコーとレントゲンを受けに毎月同じように行って、その検査の結果を聞きに、また翌週に行くというパターンを2年間やりました。」
「ちょっと腰が痛いとか、なんとなく背中が張るというと、『それは腸には関係ないから、自分で行く病院があったら、行って診てもらったらどうですか』と言うだけでした。もう先生は腸のことだったら診るけれど、口内炎ができて口のなかにブツブツができて、私が『舌がんになってしまったかもしれない』と言っても、『それは私にはわからないわね』と言うのです。『どうですか?』と言うのでもなく、先生は『あ、今度はそう来ましたか』という感じで、『だったら歯科のほうに行ったらどうですか』と言うので、『紹介していただけるんですか?』と言うと、『いやそれはあなたがそう思うのだったら、そっちに行って診てもらったらどうですか』と言うだけで、『先生はお忙しいので腸のことしか診ないのだな・・・、大学病院というのはそういうところなのかな』と思いました。
もうそれはそれで先生に逆らう気にもならないので、自分で『じゃ、ちょっと診てもらおう』と思って行きつけの歯医者さんに行くと、『これは別にそんなに心配するものでもないですよ』と言われました。やはり先生は腸だけ診ているとは言っても、ある程度血液検査で数値を見ているのでわかっていて、それほど親身に真剣に診てくれていてそう言ったのかな・・・と思いますけど。今になればそう考える余裕があるけれど、その時点ではちょっと冷たくされるとすごく落ち込んでしまったりしました。」