「ようやく退院したと思ったら、翌日から抗がん剤治療なのです。なぜ入院中に抗がん剤治療を始めずに、一度退院してしかも翌日から外来で抗がん剤治療をするかと言うと、簡単なことで、抗がん剤治療は保険が利かない組み合わせのXELOX(ゼロックス)療法というものだからです。大腸がんの方でしている人もいると思いますが、これが結構お金がかかってたいへんなのです。それを翌日から始めて、いまだに続いています。
ゼロックス療法: 抗がん剤のオキサリプラチン(点滴・初日のみ)+カペシタビン(錠剤・2週間服薬)を2週間継続し、1週間休薬期間をおく、というサイクルを1クールとして継続する大腸がんの化学療法。
星野さんは、このゼロックス療法に抗がん剤ベバシズマブ(点滴)を組み合わせた治療を受けている。
女房のときに(がんは)お金がかかるとわかっていたので、私は若干の医療保険にも入っていました。33日間入院して、退院の支払いのとき大腸と肝臓の手術あわせて15万円ぐらいでした。それは高額医療費制度があるので33日間で約15万円です。ところが翌日外来で抗がん剤の点滴を受けて支払いを見ると、診察費と2週間分の薬代も含めてですが、その日1日だけで15万円ぐらいなのです。」
薬の名前(商品名) | |||
XELOX療法 | [ | カペシタビン(ゼローダ®) | 錠剤2週間分 |
オキサリプラチン(エルプラット®) | 点滴1回分 | ||
ベバシズマブ(アバスチン®) | 点滴1回分 | ||
合計 | 約15万円※ |
「私も不用意といえば不用意ですけど、抗がん剤の点滴を受けた直後に、ラーメン屋に行ったのです。夕方の4時ぐらいまで昼飯抜きでずっと点滴を受けていましたから。ラーメン屋に行って、つけ麺はちゃんとおいしく食べられたのですが、氷の入った水が出てきて『がぶっ』といったら、口の中がものすごく痛くて。それがいちばんの副作用だから『気をつけろ』と病院からもらった抗がん剤の冊子に書いてありました。『冷蔵庫の冷たいものに素手で触ってはいけない』『冷たいものを飲んではいけない』と。
私はコーラとかアイスコーヒーが好きなのですね。退院してコーラも飲めない、アイスコーヒーも飲めない、湯冷ましがベストですので、これはきつかったですね。だから仕様がないので、温かい飲み物で、最近は甘酒と葛湯が必需品で、欠かさないようにちゃんととってあります。甘酒は若干お酒を足すときもあります。そんなには入れないですけどね。
物を食べられないよりも、飲み物に制限があるということです。ですから、うちの冷蔵庫には物が入っていません。うっかり手を入れて触ると『ズキッ』とくるので。しかも少し前までは普通に水道水ぐらいは飲めたのが、だんだん寒くなってきて外の気温が冷えてくると水道水もそのままではちょっと飲めない状態になってきています。これが抗がん剤で特にゼロックス療法だといちばんきついところかもしれません。髪の毛は抜けなくはないらしいですけど、ほとんど影響がありません。」
「それから針で刺されるような痛みがふいに来るのです。(チクッという痛みは)だんだん広がってきて、はじめは指先だったのが、それが上腕とか肩のほうまできています。現在、抗がん剤を5回ぐらい連続して続けてきていますが、肩や胴体にいきなりチクっという感じがきます。耐えられないほどではないです。チクっときても、『あ、きたな』というぐらいで、一瞬で済んでしまうものなのですが。」
「あとはだんだん手足の先の皮膚が薄くなってきているのか、色がついて、しみが増えてくる。これは薬をやめてもしばらくは残るという話があり、女の人はきついだろうなと思います。今までなかったところにいきなりしみができてしまうわけで、これはきついかもしれないと、今、治療を受けながら感じています。はじめはぽつぽつしみができていて、汚れかと思って石鹸でこすっても落ちないので、『あ、副作用だ』とそこで気がついた。これものんびりしていますけどね。もらった説明書にはちゃんと書いてあるのですけど、やはり自分で目にしないとなかなかわからないというのがあります。
ほかの副作用はとりあえずはないですね。血圧とかいろいろ、いざというときには救急車で来てくれと言われているのですけども、それほどの副作用は起きていないから、やはり昔に比べると進歩してきているなという気はします。
あとは長い目で見ると、さすがに体力は落ちてきていますね。3〜4時間仕事をすると、ちょっと休憩しないともたない。それは適当に休憩をとり、1時間ぐらい寝て復活するという感じで、やっています。」