がんと向き合う

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星野史雄 さん
(ほしの・ふみお)
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東京家政大学非常勤講師。1997年、妻が乳がんで亡くなったことをきっかけに闘病記を集め始め、翌年、闘病記専門古書店「パラメディカ」を開店。2010年7月、直腸がん(ステージ4)+肝転移が見つかり、8月に手術。大腸がんの闘病記を過去に100冊以上読んでいた知識が、自身の闘病にも役に立っている。共同編著に『がん闘病記読書案内』。自らの闘病体験を記した『闘病記専門書店の店主が、がんになって考えたこと』が2012年9月、産経新聞出版より発売された。
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9がんでよかったこと

「がんは発症してから死ぬまでに時間がありますから、まだありがたいのですね。これがくも膜下出血や脳幹出血だと、ある日突然そこでぷつっと切れてしまう可能性があるわけです。たとえば私だったら『コレクションのホラー小説を生きている間に処分してから死にたいな』などと思います。趣味を疑われるかもしれないから。それががんだとできますが、脳出血だと何もできないままなので、がんで死ぬというのはそんなに悪いことではないかもしれない。少なくとも2〜3日あればある程度の後片付けができますから。そんな気はします。

たとえば顔に腫瘍のようなものが次々と出てきて外出できないという病気があります。死なない病気にしてもQOL(Quality of Life:生活の質)から言うと本人はつらいですね。または日本全国で70人しか患者がいない病気と比べれば、大腸がんはポピュラーもポピュラーで、ありふれているような病気です。『がんが見つかってよかったですね』というお医者さんがいました。発見できたのだから、対処する方法があるから、それは見つからずにずっといって、ぎりぎりのところで発見されるよりも早く見つかれば『それでよかったじゃないか』というお医者さんがいましたけれども、その気持ちは今になってある程度わかりますね。

僕の場合はもうちょっと早く見つかれば、もう少し楽だったのですが。それにしても今年1冊本を出したので、希望的観測から言えば1〜2年の猶予があればもう1冊ぐらいいけるのではないかと、そんな気持ちもあります。」