がんと向き合う

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川村正司 さん
(かわむら・まさし)
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岩手県盛岡市出身。2000年(52歳)に直腸がんが見つかる。経営していた会社を1ヵ月で引き継ぎ、直腸がん(ステージ2)切除術を受け人工肛門を造設。術後は不安な気持ちが常にあったが、日本オストミー協会を通じて多くの仲間と知り合うことで人生観が変わり、全国のオストメイト(人工肛門・人工膀胱保有者)のQOL向上をめざして活動を開始。ブログ「オストミー・カフェ」。趣味はお祭りでのお神輿担ぎ(盛岡八幡宮南會)。
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8東日本大震災を経験して見えてきたこと

「今回の3・11の地震と津波では、WOCナース(皮膚・排泄ケア認定看護師)さんの努力に非常にわれわれ感謝しています。それから販売店さんと装具メーカーさん、とにかくわれわれのそばに常についてやってくれて非常に感謝しています。

やはり残念なのは行政ですね。たしかにあれほどの大災害ですから、現場はたいへんだというのはわかりますが、あまりにも縦割りの世界で、本当の意味の弱者に対して彼らは手を差し伸べたのだろうかというのを感じました。

たとえば医療の問題にしても、WOCナースさんが県を越えて岩手に入ることが一時できなかった。知事に『なんとかしてくれ』と直訴してようやく入れたという現実があります。そういうのは法律がどうとかあれがこうとか言う前に入れるべきでしょう。『これは事例がないから』と。最初からこんな大震災の事例があるわけないんです。またWOCさんがストーマ装具を持ち込む際、『どうして持っていくのか』『これは日用品ですから』『緊急支援物資にはなりません』『でも現地で困っているんです、入れてくれませんか?』『ダメです』と言うので、販売店の方が普通の医療機器の中に装具を混ぜて、現地へ持って行きました。WOCの方々もお手伝いに来るときに手荷物で持って入った。それも手荷物を全部調べられて『支援物資は持たないように』と言われていたので、自分のバッグの中に数枚の装具を隠して入れて持ち込んでいるんですね。これは何なんですか。(オストメイトにはストーマから便が)漏れるという問題があって、避難所というあれほど広い500何人もいるところで漏れたら、そこに居られないですよね。そこに手を差し伸べないで、『ストーマ装具は日用品で、支援物資にはならないから持って行ってはいけません』というのは何事ですか。こういうことが現実としてありました。」

●ストーマ装具は人間の尊厳にかかわるもの

「要するに助成金の関係で、ストーマは医療用品にできないという理由があったようです。それをオストミー協会が認めた経緯があり、今回の大震災が起きたので、『ストーマは緊急医療機器ではないので緊急時には入れません』ということでした。ですから災害が起きたときの特例として、『ストーマ装具は人間の尊厳にかかわる必要なものです。ぜひ(被災地に)入れてもらわなくては困る』と今度はわれわれオストミー協会が訴えなければダメなことなんです。」

※ストーマは健康保険適用外で、本人実費負担を軽減するために、自治体の福祉として、無料配布や一部返金などを行っています。厚生労働省では「日常生活用具の排泄管理支援用具」として定めています。

●避難所のトイレについて

「(人工肛門は)皆さんのようにトイレのがまんができない。今から便が出ますよというとき、普通の方はがまんできますが、われわれはまったくがまんできないわけです。出ればどどどどどどーと出てきてみたり、今何もないのかなと思うと急に出てきたり。たとえばトイレで行列の後ろに並んでいると、『参った参った』になっちゃうんですね。どこかに行ってやらなきゃいけない。この前、宮古のオストメイトの方で『避難所のトイレでできなくて、半壊した自宅に戻ってそこで作業をした』という方がいらっしゃいました。やはりトイレはみなさんとは違うところにあったほうがゆっくり安心してできるんですね。ひとつには、装具を交換するのに時間がかかるんです。10分も20分もかかる。人によってはもう少しかかる。あるいは漏れてしまったら約1時間。そうすると避難所のような狭いところでブーイングですよね。それはいたたまれない。」

Q.避難所にあるべきオストメイト用のトイレとは?

「立ってストーマケアができるテントみたいなのがあれば、それでいいんじゃないかと思っています。あまり値段が高いと行政区が買ってくれないから、国庫補助金の出る範囲で、大きさも極力コンパクトで邪魔にならない程度のものにしていただくことを念頭に、進んでいきたいと思っています。」