がんと向き合う

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河崎睦美 さん
(かわさき・むつみ)
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1962年長崎県生まれ。3〜4年ほど痔の症状があり、48歳(2010年)のとき思い切って肛門科を受診、直腸に絨毛(じゅうもう)腺腫が見つかる。病理検査で悪性と診断され、直腸を切除、人工肛門を造設する。手術から約1ヵ月半後に保育士の仕事に復帰。自分が内部障害者となり、保育園の障害者・家族の気持ちにより寄り添えるようになる。万歩計をつけて散歩するのが楽しみ。コーラス歴17年。
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1はじめの症状

「2006〜2007年ぐらいから『ちょっとお尻が痛いな・・・。これが痔というものかしら』と思い、すぐに治ったので放っておいたのです。またしばらくすると痛くなって、市販の薬をこっそり買ってきてつけたら治ったので、『やっぱり痔だったんだ』と思いました。

2008年ぐらいに今度は脱肛して、『お尻からなんか出ている』とは思ったのですが、そのときはもう痛みも全然ないし、押すと中に引っ込むので『ふーん』という感じでした。痔だと思っているから、恥ずかしくて絶対誰にも言えないし、ちょこちょこ脱肛するようにはなっていたけれど、押すと引っ込むので、気にはなりながらもそのまま過ごしていました。

2009年秋に健診で“貧血”が引っかかりました。それまで私は本当に元気だったので、貧血というのが自分の中にイメージとして全くなく、『え?』と思いました。そうすると病は気からで、『そういえば息苦しいかもしれない』と思いだして、その頃自転車で職場まで通っていたのですが、15分か20分で行けた道が30分かかるようになりました。職場に行くとバターンと倒れて10分ぐらいハーハーゼーゼー言う感じが続いて、『これは本当に貧血だ』と思いました。」

●恥ずかしくてなかなか行けない肛門科

「2010年2月にやっと内科に行きました。まだ痔の病院には行かないんですね、恥ずかしいから誰にも言えず、『これは貧血を治せばいい』と思って内科に行って、そこで鉄剤を処方されました。少しは元気になったのだけど、その頃お尻から出血していたので『これは多分、痔を治さないと治らないんだな・・』というのはわかっているのですけど、恥ずかしいというのがあって、今考えるとお医者さんは私のお尻なんかどうでもいいのでしょうけど、誰にも言えない状態でした。」

●味覚障害、体重減少

「そうこうするうちに味覚障害が出てきて、『これは鉄剤の副作用だ』と勝手に思っていました。それまではお酒を週に1〜2回は飲んでいたのが、もう全く飲みたくない、飲んでも味がおいしくない。もともと甘いものはそんなに好きではないけれど、もう本当に甘いものが食べたくない、食べてもまずい。

2010年5月ぐらいから体重が落ち始めて、最初すごくうれしくて『お酒とスイーツをやめるとこんなに痩せてくるんだ』と思って、主人にも『私、痩せたんだよ』と言って喜んでいたのです。

2010年の夏はすごく暑かったじゃないですか。7月ぐらいにげそっと痩せてきて、私は保育士のパートをしているのですけど、保護者からも『先生、痩せたけど大丈夫?』と、痩せたというより“やつれた”という感じだと言われて。その頃年齢が47〜8歳だったので、更年期障害もそろそろ出始める頃で、『これは更年期かな』とも思いましたが、多分どこかでは『痔を治さないと治らないんだろうな』というのはありました。」

●ついに肛門科を受診

「近所に肛門科のある病院があったのでそこに行きました。行くことは主人には全く言えないので、ちょうど主人と次男が『夕飯いらないよ』という日があり、『今日しかない』と思って行きました。

先生が私の顔を見るなり、『その顔色の悪さは、痔なんかじゃない』と言われて、すぐに大腸を内視鏡で調べたら『なんかあるー』と言って先生がものすごく慌てて、『これはとてもたいへんな病気だから。ご主人は?』と言われたのだけど、『いや、主人に恥ずかしくて言えなくて、今日は主人がいないから来ました』と言うと、『えー!』と言われて。そのまま帰ってとにかく主人に電話して『たいへんな病気だって先生が慌てるから。今日はもう病院は終わったから明日一緒に行ってくれる?』というふうでした。

翌日主人と病院に行くと『ご主人、気づかなかったんですか、奥さんのこの顔色の悪さ』と言われて、主人も『え・・僕、全然わからなかった』と本当に主人のほうがガーッと落ち込んで。私はとにかく『もういいから早く何とかして』というくらい体がしんどかったんですね。フラフラだし食べられないし、『早くこれ取っちゃってよ・・・』という感じでした。

『とにかく大きい病院を紹介するから。個人病院だけど僕の信頼する先生がいるから』ということで、すぐにそこに行くと『河崎さんのために(手術の予定を)入れたから』ともう即手術が決まり、そう診断されたという感じです。」