がんと向き合う

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河崎睦美 さん
(かわさき・むつみ)
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1962年長崎県生まれ。3〜4年ほど痔の症状があり、48歳(2010年)のとき思い切って肛門科を受診、直腸に絨毛(じゅうもう)腺腫が見つかる。病理検査で悪性と診断され、直腸を切除、人工肛門を造設する。手術から約1ヵ月半後に保育士の仕事に復帰。自分が内部障害者となり、保育園の障害者・家族の気持ちにより寄り添えるようになる。万歩計をつけて散歩するのが楽しみ。コーラス歴17年。
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4先生、患者、それぞれの思い

「術後1週間ぐらいしたとき、夜中に騒ぐ患者さんがみえて、どうやら麻酔で幻覚を見るらしいのですね。その人が騒いで夜寝られないのと、看護師さんがそれを止める声がまたうるさくて寝られないのとで、毎日来てくれていた主人に『寝られなかったんだわねぇ』とポロっと言ったのです。主人がそれを気にして婦長さんに『寝られなかったと言っているので、ちょっと様子を見てもらえますか?もし4人部屋が空くようだったらそこに移ってもいいし』とクレームではなくて『ちょっと気にしてもらえますか』と相談したら、すぐその日に差額ベッド料が同じ1人部屋に『河崎さん移動します』と言われて、そこに移りました。

そして先生がストーマの説明とともに来て、『あなたはわがままだ。そういう患者さんがいることも当たり前なんだ』と言われました。『いや、それはわかるんだけど、私も患者だから眠れないのは・・・』というのがあり、『別にクレームとして言ったわけじゃなくて』と言っても、『いや、それはもう病院にとっては立派なクレームだから』というふうでした。

手術前に、私が質問できないことをいっぱい質問してくれた主人のことも『あんなにいろいろ聞く人ははじめて見た』と言われて。多分(患者さんは)お年寄りが多いということもあって『先生、先生』という感じで、他の方はあまりいろいろ言われないのですね。私は結構『自分が主体的に治さなきゃ。これからストーマと生活していくのは私なのだから、私が覚えなきゃ』と思って質問したのだけど、それがどうもうまく伝わっていない。『問題のクレーマーの患者』と見られているのかと思うとすごく悲しくて、『どうしたらいいんだろう』と思いました。

主人とふたりで『ここに座りなさい』と怒られたのですね。言っても変わるような相手じゃなく、おとしも結構上でとても権威のある有名な先生みたいで、いい病院を紹介したような雑誌にも載られている方なのです。なので自信はあるし、確かに私の手術も上手にしてくれていて、ストーマのトラブルがないということは、本当に腕は確かなのです。ただ私との信頼関係はちょっとできなかったかな・・・。『わがままだ』と言ったことはあとから『言い過ぎた』と謝ってくださったのですが。(先生は)疲れてもいたのですかね。

今は結構『チーム医療』で『患者さんと一緒に病気を治しましょう』という考え方なのかと思ったのだけど、そうではなかった。視点が主従関係というか、患者はあくまでも『先生に黙って信じてついて行けばいいんだよ』と。昔は多分そうだったと思うのですけど。主人の友達が『変わりようのない相手に怒っても仕方ないじゃん。とにかくここでは病気を治すことだけ考えたら?』と言ってくれて、『そうだね』と言いました。

でも病気を治してもらった、手術が成功してこうして命があって生きているということに関しては、その先生にものすごく感謝しています。」