がんと向き合う

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河崎睦美 さん
(かわさき・むつみ)
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1962年長崎県生まれ。3〜4年ほど痔の症状があり、48歳(2010年)のとき思い切って肛門科を受診、直腸に絨毛(じゅうもう)腺腫が見つかる。病理検査で悪性と診断され、直腸を切除、人工肛門を造設する。手術から約1ヵ月半後に保育士の仕事に復帰。自分が内部障害者となり、保育園の障害者・家族の気持ちにより寄り添えるようになる。万歩計をつけて散歩するのが楽しみ。コーラス歴17年。
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5今まで見えなかったこと

「保育園で今、障害児のお子さんの補助をするという仕事をしています。やはり親御さんは自分の子の障害を認めたくないという気持ちがあるのですね。

私は、いざ自分がオストメイトになって障害者4級になったら『えっ・・。障害者?』と思って、障害者手帳をもらっても何か全然うれしくないし、それで割引きになっても『えー・・』という感じでした。だから“障害を受けとめる”と簡単に今まで言っていたけれど、親は自分の子の障害を受けとめるのはもっとたいへんだろうな・・・簡単にそういうことを口にしてはいけなかったな・・・これからは少しは親御さんの気持ちに寄り添えるかなと思いました。

なかなか葛藤があって受け入れられないというのも実感としてわかったので、そうそう簡単ではない、やっぱり時間がかかるよね、と思いました。『あなたのお子さんは障害者ですよ』と言われて『ああ、そうですか』とは納得できないですよ、自分を責めるだろうし、『どうして、うちの子だけ?』と思うだろうし。私だって『なんで私が?』『もっと早く病院に行けばよかった・・・』と思ったので、やっぱり時間がかかるんだろうな・・・その気持ちに寄り添えるといいかな・・・と思います。」

●電車に乗って思うこと

「私みたいな内部障害者は、はたからわからないじゃないですか。今私は元気ですけど、退院してすぐはやはり歩くのもたいへんで、電車に乗っても『座りたいな・・』と思いました。でも座ると白い目で見られて、『障害者手帳を持っているんですよ』と本当に見せようかしらと思うくらいでした。どうしようもなく身体障害者用トイレを使ったりするときも、やっぱり人の目が気になるので、そういうことも『今まで全然知らなかったな』と思いました。

車椅子の方や目の見えない方など、目に見える障害だと『あの人たいへんだろうな』という気持ちが起きると思うのですが、内部障害者は(外からは)わからないので、電車の優先席に若い人が座っていても『もしかしたらあの人は内部障害があるのかもしれない』という目で見られるようになりました。」

●もし災害に直面したら

「今回の東日本大震災のときは、『もし私がそうだったら、どうしよう』と思いました。まず避難所でお風呂やトイレが困りますよね。もし仮設のお風呂があったとしても、私のこの状態では入れない。トイレもひとりで占領するわけにいかない、どうするのだろう。目に見える障害ではなくて困っている人がいっぱいいるんだろうなと思うと、去年の3月は本当に落ち込んで、私はどうするのか、みんなどうしているのかな・・・とこれまでとはすごく違う見方をしました。」

Q.災害のために、何か備えていることはありますか?

「普段もストーマ装具を持ち歩いています。1週間ぐらい、あるいは2〜3日は(避難先に)いられるように。主人には『もし今ここで何かあったら、私は友達のいっぱいいる関西、大阪にすぐ行くから。』と言っています。自分の家から持ち出せないこともあるので、友達や親戚の家に装具を置いておくことも考えようかなと思っています。

避難所は、装具を交換する場所があればいいですけど、まず自分だけでそんなにトイレの個室を占領はできないですよね。だからいられても1週間ぐらいかなと思っています。」