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中西 洋一さん
中西 洋一さん
(なかにし・よういち)
九州大学病院がんセンター外来化学療法室室長
1980年九州大学医学部卒。85年米国国立癌研究所留学などを経て、2003年から九州大学呼吸器内科学分野教授。06年からは同大病院高度先端医療センター長を兼務。専門は肺がん治療。
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1一刻も早く禁煙を

「(わが国では毎年肺がんにかかる方が非常な勢いで増えてきています。2015年には推計で、年間に男性11万人、女性3万7000人、あわせて14万7000人ぐらいの方が新たに肺がんになり、治療がなかなか簡単にいかない現状のなか、おそらく12万人に近い方が肺がんで亡くなるのではないかと言われています。12万人という数は、日本国民の年間死亡数から計算してだいたい8人に1人ということになります。

肺がんの原因の大半はタバコです。原因の8割とも9割とも言われています。2000年の世界肺がん会議で『禁煙東京宣言』というのが出されました。それによると、世界の肺がんの人々のうち80%が、自分でタバコを吸うことによるいわゆる『能動的喫煙』が原因で、5%の方は職場や家族のタバコの煙を吸うことによるいわゆる『受動的喫煙』による肺がんと言われています。残りの15%は職業的な発がん物質の曝露、大気汚染、それから遺伝的素因、いわゆる体質と言われています。いずれにしても、原因の大半がタバコであることには間違いがありません。

やはりタバコが肺がんのいちばんの原因である以上、タバコをもし吸っておられれば一刻も早くおやめいただきたい。禁煙に関しては、どんなに遅くても遅すぎないということは明らかにされています。そしてまた早ければ早いほどいいということも明らかにされています。ですからまずはタバコをおやめいただくこと。また家族や職場でそういった環境があるときは、できるだけその環境を改善する方向に努力していただくことだろうと思います。検診の善し悪しについてはまだいろいろと意見もあるかと思いますが、いわゆるがん年齢でどうしてもタバコがやめられない、どうにかやめたけども今まで吸ったタバコのことが心配だ、そういうがんに罹りやすいハイリスクと言われる方は、少なくとも検診をお受けになることは、がんを早く見つけるためのひとつの手段ではないかと思います。」

●発がん性物質について

「最近、世間で非常に騒がれているアスベストは、やはりタバコとは関係なしに、肺がんとの関係があると言われております。ただこの場合も、アスベストを吸うだけでものすごく肺がんが発生するというわけではなくて、そういった方がタバコを吸うとがんになりやすさが一気に20倍30倍にはね上がると言われています。たとえば自動車、特にディーゼルエンジンの排気ガスといった大気汚染物質が悪いとか、あるいはラドンという大気中にある放射性物質、こういったものが(肺がんに)関係あるということも言われています。しかし、タバコの悪影響からすると、その危険度は100分の1ないし1000分の1程度だろうと言われています。ですから、できるだけきれいな環境を心がけることは大事だと思いますが、あまり過度な心配をしても・・・というのは私が率直に思っているところです。」