「あまり過度に構えて(病院に)来られることはないと思っています。私自身大事だなと思っていることは、よく医師対患者関係という言い方をしますが、これは対決するものではなくて、敵は医師でもなく患者さんでもなく、病気なのですね。したがって、あまり過度に構えずに、(医師は)病気という敵に対して一緒に闘う相手、戦友だと思っていただければ、いちばんありがたいと思っています。 がんになった患者さんはけっして簡単な状況ではないと思いますが、自分の中の殻に閉じこもらずに 自分の思っていること、自分の感じていること、あるいは苦しいと思っていることをできるだけ率直にメッセージとしてお伝えいただきたい。これがいちばん重要なことじゃないかと思っています。自分の中だけに悩みや辛さをため込む状況、これはけっしてがんの治療にいい方向には働きません。やはりコミュニケーションをとることが気持ちを救ううえでも、あるいはよりよい治療環境や生活環境を実現させるためにも、非常に重要であると思っています。 患者さんについて難しいなと思うことがあるとすれば、ひとつはやはり症状をあまり訴えられない方です。できるだけ医師の前で模範的な患者であろうと努められる方がおられるのですね。そうすると、やはり情報が発信されませんと私たちはそれに対応ができないという意味で、どうしても患者さんの辛さ、あるいは身体的な問題、これに気づくのが遅れてしまいます。したがって何よりもきちんとメッセージを発信していただくことが大事です。そういう意味で、何もおっしゃらない方というのはなかなか難しい。もちろんなんでもかんでもおっしゃる方も難しいのですが、これは私たちはプロですから、たくさんの訴えの中から何がいちばん重要かということはある程度専門的な経験のなかから抽出して対応させていただくことになると思います。」