林 「あまりコストのことを考えて(自分に合わない装具を使うと)、逆に皮膚炎を起こしたり、いろんなトラブルを起こしたりします。身体障害者に対する日常生活用具(ストーマ用装具)の給付制度が利用できるので、それでも多少は費用がオーバーしますが、自分にいちばん合ったものを使っています。」
溝口「われわれの患者会は高齢化が進んでいて、平均年齢が多分70歳を超していると思います。ですから若いときには考えなかったこと、たとえば『目や手が不自由になって使えなくなったときに、装具の交換をいったい誰がしてくれるのだろうか』という声を患者会のグループ討論会でもよく聞いています。
装具交換そのものはまだ医療行為として扱われているので、ケアセンターのヘルパーさんは基本的には交換ができないと聞いています。今後は病院とケアセンターと連携して、高齢者の方の装具交換がうまくできるような体制を実は考えていかないといけないと思っています。私自身はまだ若いので、そこまでは考えていないのですが、患者会で切に言われると、『そういう社会になっていくのかな』と思います。」
林 「私もいちばんそれを心配しています。自分が年をとったときに『どうなるんやろね』と。私の場合、なんとか病院で訪問看護をしてくれるのではないかと軽く思っていますけど。
私は左目が悪いから、面板(パウチを貼りつける土台)に穴を開けて(人工膀胱にかぶせるように)持っていくときに、両目を開けていると位置がわかりません。片目をつぶってかぶせると、ひょっとくっつきます。両目を開けていると(焦点が合わず)、『え、どっちやった?』という感じになります。
1回新品を貼ると、はがすときにベターっとくっついてしまってたいへんなので、それこそリムーバー(剥離剤)で一所懸命とらないと、という感じです。」
溝口「使い回しができないので、1回貼りつけて失敗すると、また新しい装具と交換しなくてはいけない。」
林 「新しい装具を出しておいて交換しないといけません。尿路系ストーマの場合は(人工膀胱から常に尿が)出ているので、もし失敗したらそれをすっと交換できるように、予備に装具をもう1枚用意して、とそこまでやっています。
年をとってからはそういうところがたいへんなので、やはり訪問看護じゃないかな。私だったらしょっちゅう『交換して・・・』と病院に行っているかもしれないです。」
溝口「まあ、楽は楽ですよね。」
林 「『教えたとおりにやってよ』と。そんなものですね。」
溝口「平成18年に施行されたバリアフリー法の改正によって、公共の施設には1箇所以上は多目的トイレが設置されるようになりました。それ以前の設備もいろんな改良工事がなされ、数年前に比べたらたぶん比較にならないぐらい今はオストメイト対応のトイレができていると思います。そういうトイレがあるというだけで、われわれは安心です。
福岡市の地下鉄は今ほとんどの駅にオストメイト対応トイレがついています。確かに設備を何かしようとするとなかなか制約が厳しくて、最終的に決定するまでにはやはり時間がかかるのだろうと思います。いざ決まって予算さえついてしまえば、すぐ設置するのでしょうけども。」
林 「確かにストーマをもっているわれわれだけではなくて、他の身体障害者の方や、赤ちゃんのいる方も『多目的トイレがほしい』という要望はあります。ところが何せ設置するのに普通のトイレより何倍もお金がかかるので、なかなか先に進まないということです。われわれからしたら、早くどんどん設置してほしいのですが。」