「アメリカで膵臓がんの罹患率が減少傾向にあるというのは、その理由はまだわからないと思うのですが、疫学的にみてそういう現象があるということです。
日本は世界一の長寿国ですよね。がんというのは遺伝子異常から生まれますから、やはり時間がかかる病気です。加齢とともに罹患率が高くなるという病気ですから、長く生きれば生きるほどがんにかかる可能性も増えてくるのです。
もうひとつ言われているのは、疫学的に見てやはり食生活というのも重要なのですね。その中でアメリカもそうですが、日本でもメタボリックシンドロームと言われるように、食生活を見てみると、血糖値が高い人が増えてきたり高脂血症で悩む人が増えてきていますが、ほとんどその膵臓に関連することなのです。そうした潜在的な膵臓がん予備軍が増えてくると、当然膵臓がんの患者さんも増えてくるだろう、と。そういうことから、日本では膵臓がんの患者さんは増加傾向にあると言われております。」
「膵臓がんのなかの約7%の方は家族性膵臓がんと言われるタイプの方です。そういうことをPanCANを通して知りましたので、自分もやはり不安になりました。
実は妹が(以前に)胆石で胆嚢を摘出しました。私も同じで、食生活が同じだからかと思うのですけが胆石をやり、胆嚢摘出手術をやっています。なので自分も膵臓がんの可能性がなきにしもあらずで、検査を受けたところ、案の定その前病変らしいものが見つかりました。それが先に進むことがないようにいろいろなことに注意するようにはなりました。かなり自分のライフスタイルを変えましたので、そういう意味では妹に感謝しています。」
「食事関係でいちばんいいのは野菜果物をたくさん食べることというのがありますね。もともと私は野菜嫌いではないのですが、通常なかなか食卓に野菜がたくさん並ぶことはありませんよね。外に行くとなにか付け合わせの野菜が出てくるくらいで。ところがサラダを中心に食べるようになったのですね。
これはASCO(米国臨床腫瘍学会)へ行かせていただいた時に、いろいろなお医者さんと一緒に話をする機会がありました。皆さんたいていお昼はサラダなのです。当然タバコも吸いません。タバコ吸いのお医者さんはいるのですが、だいたい南米から来ているお医者さんとかで、アメリカの先生はもうほとんどタバコを吸いませんし、お昼というとサラダを食べていますし、非常に健康に留意されています。」
「やはり注意しなければいけないのは食生活ですね。前はよく、営業をしていましたので暴飲暴食不眠不休で、全然偉くないのですが、いろいろ頑張っていた時期がありました。しかしそういうことはさすがにしないように改めています。
膵臓がんに関して言えば、たとえば脂っこいものというのはたしかにリスク要因のひとつとして挙がっています。それからお酒もそうです。やはり膵臓に負担をかけるようなものはよくないというエビデンス(科学的根拠)があるというのは、この間Johns Hopkins大学の先生がおっしゃっていました。
*お酒と膵臓がんのリスクに関するエビデンス・・・米国では、疫学調査約86万人分のデータを解析した結果、「1日2杯以上のお酒(1杯はビールなら360cc、ワインなら120cc、80度の蒸留酒なら45cc)を飲む人が膵臓がんにかかるリスクは、飲まない人よりも22%増加する」ことが認められた(Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2009; 18: 765-76.)。
食事に関しては、予防という観点からいえばかなりいろいろなことができるのではないでしょうか。当然アメリカのがん協会も野菜、果物を食べましょうと言っていますし、それからあまり甘いものを採るのはやめましょうということは、もうアメリカでは一般的に言われるようになっています。脂っこいものはやめましょうとか。そのへんは注意すればかなり効果はあるのではないかと思います。あとはビタミンに関して、抗酸化剤のようなものはいいということも言われています。抗酸化剤といえば、野菜果物イコール抗酸化剤ですので、そのへんは確かにいいのかなということはあります。ですからお酒、たばこは当然のことですが、あまり甘いものばかりをたくさん食べて糖尿病になってしまうようなこと、というのは避けたほうがいいという気はします。
お酒もほとんど飲まないですね。好きなので以前はかなり飲んでいた時期もあったのですが、禁酒をしました。今は飲んでもほんの少しです。運動もやはりするようになりました。妹もそうだったのですが、私も腰痛があるタイプなのです。ですから、腹筋と背筋の運動もやりますし、それから車でばかりいろいろな所へ行っていたのですが、歩くようにしました。お陰さまで4キロ痩せました。」