統合失調症と向き合う

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渡邉博幸さん
渡邉 博幸さん
(わたなべ・ひろゆき)
国保旭中央病院神経精神科
地域精神医療推進部部長
1992年千葉大学医学部卒業、同大附属病院研修医を経て、1998年大学院修了後、同精神科助手。2007年より同講師を経て、2009年に現職に就く。地方での精神医療の活性化を図るため、精神疾患に特化した訪問看護ステーション「旭こころとくらしのケアセンター」の設立など、様々な地域精神医療の仕組みづくりに関わり、それらとの強い連携のもと精神科医療を実践している。
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5Q.地域で暮らすメリットは?

「病を得て、一生涯、自分はそれに足かせのように縛られて入院を続けなくてはいけないんだと、あきらめの気持ちでおられる当事者の方達、まだまだたくさんいらっしゃると思います。

在宅になれば、自分のやりたいことを自分のペースで計画して行うことができますから、当事者の方達の弱くなってしまった自己効力感、自己評価を高めていくことになると思います。」

●明るい見通しが生まれる

「自分の生活を自分のペースで行える、『ああ、良かった、面白かった、自分がここまでできるようになった』というのを味わえるということは、病状が少し乱れても何とかなるだろうという対処可能感につながっていくんですね。

明るい見通しというか悲観的じゃない見通しが当事者の方に生まれてくると、『ちょっとストレスがかかって少し不安になったけれどもそのままやり過ごしていたら、また軽くなったし、日中はデイケアのほうに行って友達とおしゃべりができたし、何とかなるかな』という気持ちの持ちように変わっていきます。このことが再入院を防ぐ大きな力になると、私は思っています。」

●家族への効果

「ご家族に対しても同じことが言えるんです。ご家族も(当事者が)ちょっと病状が悪くなって、独り言をぶつぶつって言い始めたら、『これはまた悪くなる証拠だから入院させなきゃいけない』、あるいは『悪くなったから薬を飲みなさい飲みなさい』とご本人にプレッシャーをかけてしまう。ご本人もそれで余計反発して飲まなくなってしまったりする。

ところが、ご本人がそういう経験をしても、またなんとか体調を整えてリズムを取って生活ができるようになったというのを一緒に暮らしながら見ていると、『今回もちょっとピンチになったけど、大丈夫じゃないかな、調子悪くなったら、それこそ訪問看護の看護師さんに相談すればいいし』と、心の余裕が生まれて、少しゆとりを持って接していくことができるようになります。そのご家族のゆとりが、さらに当事者の方達にとっては安心な環境につながるんですね。ご本人がご自宅で一緒にご家族と暮らすことのメリットは、そういうところにもあると思います。」

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