「ああ、ない。誰もそういう情報がなかったわけですよね。たぶん今もないと思います。たぶんそれで行き詰っている方は、今もたくさんいらっしゃると思います。
ただ僕が、今は、精神の社会福祉の施設というか、ものにつながるきっかけの1つとしては、主治医がデイケアをやっているクリニックで、僕の『働けない、働けない』というような情報をドクターに言っていた時に、ドクターのほうで、『ちょっと待て』と。ま、ある意味、諦めたほうがいいんじゃないか的な発言があり、『取りあえずデイケアに行って、体を、規則正しい生活をするような方向でいったらどうだ』ということで、僕はデイケアにつながって、そこから、初めて当事者の友達ができて。
それまでは自分、孤立していました。当時、健康な友達とも疎遠になっているし、なおかつ当事者の友達もいなかったのと、親にも会いにいけないみたいな孤立した状況でした。」
デイケア:地域の保健所や精神保健福祉センター、医療機関などで、個人別の評価と働きかけ、およびレクリエーションやSST(社会生活技能訓練)などのグループワークを組み合わせることで、社会復帰の足がかりとする取り組み。
「実家とは今、実は断絶状態なんですけども、この断絶状態のきっかけというのは、やっぱり病気で。ま、親がやっぱり、僕が独立したあとに発症し、精神科に通っているから、たぶん僕が言っていること、精神病になったと言っても、普通にしゃべれるし、よく理解できないらしくて。ま、よくある話なんですけど、いわゆる根性論という両親で、会うと、逆に辛い思いをして帰ってくるので、もう今は、そのまま断絶状態になっています。」
「そうですね、デイケアの中で、同じように精神で自分の辛さが共有できる仲間ができたことが、今ある自分をまず作ってくれた第一歩だと思います。やっぱり当事者の仲間というのは、非常に精神疾患の者にとって、他障害の方もそうかもしれませんが、症状は違ってもね、(同じ)病を持つ仲間ができる大きさというのは、だいぶ違うと思います。それで、デイケアの中で、『ほっとぽっと』という、今、私が主に仕事、まあ、一応仕事と呼んでいるんですけども、仕事をさせていただいているところに関わっている人がデイケアにいて、その人の情報から、今の活動している『ほっとぽっと』につながったという形になります。」
「あのう、ドクターに関しては、全く期待していないというか…。基本、薬を処方してもらうのはドクターだから、もちろんお世話になっていると言えばお世話になっているわけではあるけれども、そのう、やっぱりお医者さんはお忙しいし、ちょっと相談しにくいなぁ。
要はドクターに相談するのであれば、地域の支援センターとか、関わっている作業所のスタッフさんなどに話を聞いて、生活の中でとか、自分の症状のこととかでの相談では、今つながっている健康なスタッフさんが聞いてくださるので、これは役に立っていると僕は思う。
またその関わりの中で、その人、その地域によって違うかもしれませんが、割と私が関わっているところでは、当事者が主体的にものを考えるということをとても優先してくださっているので、そういう意味でも、一方的に世話になっているという意識にもならなくて済んでいるような気がします。すごく支援を受けているよというふうになると、なんかこう、精神障害者ってとても弱いなという印象を持つかもしれないけれども、そういう気持ちに、割と僕はならないんですね。なんて言うのかな、むしろ、同じ神輿(みこし)を担いでいるという気持ちで、今の仕事をしているので。
ただ、(スタッフは)やっぱり障害についてのプロですから、自分の中で適応できない状況の時は、やっぱりお世話になっているという言い方でも、問題はないと思う。でも、支援者、相談者という線引きというのは、あまりないような印象を持っています。」