統合失調症と向き合う

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辰村泰治さん
辰村泰治さん
(たつむら やすはる)
1937年生まれ。2011年6月で74歳。大学生時代に発症。数回の入院、そして最後は22年間の長期入院生活を経験し、11年前に退院。現在は、社会福祉施設の運営するグループホームに住まい、いくつかの仕事にも従事している。音楽鑑賞と読書を楽しむ毎日を送っている。著書に『辰村泰治の七十年』(やどかり出版)がある。
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2精神科受診の経緯
Q.症状が出る前の生活を教えてください

「私は、小学校5年の時に父親を亡くしておりまして、中学2年の時に母親も死んでおります。ですから、それからはずっと親戚によって育てられました。主に、母の母、つまり祖母ですね、それからおじさん達、父親の兄弟姉妹とか母親の兄弟姉妹達からいろいろ援助を受けて育っております。

石川県の金沢に、両親の実家があったものですから、その母親の実家で高等学校まで育てられました。幸いなことに、親戚の者から、『大学に行きたいんだったら、東京に行っても良いよ』と言われましたので、東京の大学の試験を受けましたらパスしましたので、上京して大学生活を始めました。

そこまでは良かったんですけども、田舎者だったのと、それから両親はいないけれどもおばあちゃん子で、まあ世間知らずで、言うなれば、ちゃんとした大人じゃなかったんですね。学生寮に入って、1年2年のうちはまだ学校へ勉強しに通った時もあったんですけども、だんだん東京の、例えば、まずタバコの味を覚えまして、それからお酒の味を覚えまして、それからもう1つは、大学3年生の頃には、パチンコ依存症になっていました。

結局、3年生の頃は、昼間学生寮でごろごろしていて学校へも行かず、そんなにたくさん生活費や小遣いを親戚の者もくれたわけではないんですけども、お酒を飲ます場所だとか、パチンコ屋だとか、そういうところに出入りするようになりまして、結局、パチンコ依存症で金銭管理ができなくなりました。

それと、不健康な生活をしているものですから、だんだん体も弱ってきました。と言うのは、寮費や食事代が払えなくなりまして、そうなると食事も自分では、もらえなくなりました。

それと、もう1つは学校にちゃんと行っておりませんでしたので、1年2年の頃は一夜漬けで何とか学年末試験をパスしたんですけども、3年生の3学期になりまして、22歳の時、1959年ですか、その頃、学年末試験が迫っているのに、参考書を買ってきて読んでみても理解できなくなっておりました。『これじゃ試験を受けられない、どうしようか』ということと、それから金銭管理ができないから、明日の小遣いもなくなりました。

それからもう1つ、前につき合っていただいたことのある女性の方から、おつき合いを断られるということがありまして、それもかなりショックだったんですね。そういう3つぐらいが重なって、その頃から夜、眠れませんで、昼間ごろごろして、その頃からだんだん私の統合失調症の症状が出てきました。」

Q.どのような症状が出ましたか

「1つは、妄想ですね。被害妄想、関係妄想、誇大妄想、追跡妄想、被毒妄想、それから色情妄想というんですか、これぐらいありました。で、そういう妄想に取り憑かれておりますので、被害妄想に取り憑かれている時は、なんかオドオドして怖がって、誇大妄想に取り憑かれている時は、なんか態度が大きくなって、自分が偉くなったような気がしたんですよね。で、まあ、そばから見ても、周りから見てもおかしいわけです。目つきもたぶんおかしくなっていたと思います。

それから幻聴もありました。で、親戚の者が、『これはおかしい』ということで、ある方から紹介されて、東京の、今でもある精神科の病院へ連れていかれました。」

Q.診察を受けてどうでしたか

「診察を受けたところ、これは典型的な統合失調症、当時は精神分裂病と言いましたけど、『これは精神分裂病ですから、すぐ病院へ入院させなくちゃいけません』と言われまして、紹介されたのが千葉の精神(科)病院なんですが、そこへ入院させてもらいました。

私は、おばと一緒にロビーのソファに座っておりまして、たぶんおじか誰かが、先生のお話を聞いたんだろうと思うんですけども。私はその東京の病院のソファに座っていて、それ以後ちょっと記憶がないんです。で、目が覚めたら、きれいな病院の病室の中のベッドに寝ておりました。そこが千葉県の精神科の病院でした。

閉鎖病棟でした。そこの病院は、当時としては珍しく開放病棟もありましたけど、そこは、あとで行きました。そうですね、半年(後)ぐらいですかね。」

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