「二十歳(はたち)の時に病名が確定しました。先生から言われました。
注意散漫だったり、例えば幻聴みたいなものが聞こえるとかで、どっちかな、陽性症状だか陰性症状だか分からないですが、症状が出たということで病状が分かって、統合失調症だと病名をつけ(て)いただきました。」
「別に僕は病気を持って嫌だとか(そう)いうことは思いませんでした。逆にうれしかったです。
なぜかと言いますと、作家で夏目漱石とかいたのですが、新潮文庫で最後のほうの帯を見ると神経衰弱になったという。夏目漱石の(ような)すごい文豪でさえも病気になったというので、これは励みになったなと。
僕も作家を目指していたので、『同じ病名かな、なんか似ているかなあ』と思って、どういう状況かなあと詳しく知りたいと思って図書館へ行ったり、業績に興味を示したりとかしましたね。
夏目漱石の病気もそうなのですが、自分の症状も、他にも、当時インターネットもない状態だったのでどうしても自分から前へ進んで探し出さなければならないなと強い印象を受けたので、ほうぼう駆け回りましたね。当時二十歳ぐらいなので、僕に分かる程度の図書館での知識を蓄えることができましたね。」
「初めは、まあ『こういう病気になっちゃったんだ』という衝撃はありましたけど。でも、僕だけに付けられる病名だったらね、一人の、もし一人だけに付けられる病気だったらどう考えるかなと思いますけど、誰にでもなる(なりうる)病気だというので、別に、特に悲観(的)には思いませんでしたね。」
「父には昔、病気を知らない父であれば叱責を受けましたね。例えば、『何やっているんだ。昼間から何寝ているんだ』と罵(ののし)られ(ました)。まあ、僕は高校が夜間だったので、昼夜逆転することが多かったのですね。」
「父は態度が変わりました。『辛かったんだね』と言って背中をなで、さすってくれたりとか…。心配かけましたね。
母は、(調べて)病気に対する知識はありました。前向きでした。」
「偏見や差別ですか。そうですね、まあ世の中にはいろんな人がいるんだなあと思って、割り切って考えています。」