「31~32(歳)ぐらいの時だと思います。はっきり憶えていないのですが、家族と一緒に住んでいた時に、ダイニングとかで、私が一人で座っていて何にもしゃべらないし、何もしないし、ずっと座ったまま。表情、たぶん身振りもそうだと思うのですけど、『おかしいんじゃないかな』というのが傍目から見ても分かったと思うのですね。それで家族が、ちょっと調子が悪いのではないかと言って、『1回、心療内科を受診しよう』と…。」
「(それまで)メーカーのOLをしていました。(仕事は)辞めていました。
そうですね、やはり、周りの状況というのが刻一刻変わっていくというか。私の友達などは、独身として働いていく人もいれば、『私は結婚して幸せになりたいんだ』という人と分かれていって…。私はそのどちらの人とも友達だったのですが、自分にはそのどちらの道もなんか選べないなという感じで、自分の人生の岐路に立っていた時に、迷っているのに相談できる相手もいなくて、鬱々としていました。
で、アメリカに留学に行ったのですけども、その時に、キャリアアップ、ステップアップして(日本に)帰ってきたらとにかく仕事をしようと思って、頑張っていたのですが、その途中で挫折してしまったといういきさつがあります。」
「それはなんていうか、私と同じぐらいの時代で女子大を出ている人は結構多いと思うのですけど。アメリカに語学留学したり、自分の学歴に対してやっぱ引け目を感じている人とか、留学しているというキャリアを持って帰って、日本で何か生かしたいというようなところがあったのです。でも私は、何年ではなくてほんとうに4か月だったのですが。」
「アメリカに行っていた時は、兆候はないです。1回(日本に)帰って来たのはいいのですけど、その留学時代の時にできたタイのお友達のところに遊びに行ったのです。で、(タイから)1回帰って来てからまたカリフォルニアのほうに、友達がいるから遊びに行って、それで帰ってくる飛行機の中で、幻聴が聞こえ出したのです。
大韓航空で帰って来たので、ソウルがトランジットだったのですが、『ソウルで降りろ』という声だったのです。それがいちばん最初に聞こえた幻聴だったのです。
で、日本に戻って来るのですけども、その幻聴は、私は、一時のことかなと思ったら、ずっとくっついてくるというか、自分にくっついてきますよね。それでなんかもう、だんだん、最初おかしいし、なんか変なことを言っているし、『誰が言ってる?』みたいな感じに思う部分もあったのですけど。
だんだん幻聴の数の多さとか、言っている人の声というのが、元上司の声だったり、同僚ぐらいの関係である女の子の声であるとか、そういった声なので、だんだんそれが無視できなくなってきて、自分の生活の中に入ってきたのです。幻聴の内容も変わってくるし、自分の状態も変わってくるということがありました。
その幻聴は、最初は『ソウルで降りろ』だったのですけども、それが若い女の子の声で『大っキライ』とか、私を中傷するような、非難するような声が聞こえてくるので、そんなことを言われたら誰でもしょげるというか、だんだんしょんぼりしていくようになって…。
家の中にいてもそれが聞こえてくるから、何にもしなくなって、ほんとに動けなくなってしまって。上司の命令する声が聞こえてくるし、いろんな人の声が聞こえてきて…。極端な話、家の中でも廊下を右に行くか左に行くか迷っている時に、右に行こうとしている時に、右側方向から『そっちに行ったら損だ』と聞こえてくるのです。それで今度は左に行こうとしますよね、そういった心理が働くので、家の中ですら動けなくなってしまって。とうとう座ったきりだし、鬱々としていて、頭の中だけはぐるぐる回転しているというような状況でした。家族から見てもこれはおかしいからというので、心療内科にということだと思うのです。
『1回、心療内科を受診しよう』ということで、タクシーに乗せられて、隣の2つ、隣のというよりも2つ隣の市にある心療内科のほうに連れて行かれました。それはクリニックです。」