統合失調症と向き合う

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山﨑勝弘さん
山﨑 勝弘さん
(やまざき かつひろ)
40代(収録時)。高校生2年生の時に女性関係で不眠となり、内科を受診する。高校卒業後、自衛隊に入隊するが、症状が悪化し、精神科を受診。自分の病気が統合失調症と分かったのは22歳の時。その後、自衛隊を退職していろいろな職業に就くが長く続かず、現在は障害者の権利を守る活動に参画したり、東京都の精神保健福祉士の初任者研修で講師をしたり、研究施設で研究の手伝いなどをしている。同じ病を持つ妻と二人暮らし。結婚を機に生活保護からの脱却を目指している。
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5新しい展開
Q.一人暮らしを始めたきっかけを教えてください

「病院のケースワーカーさんが、『山﨑君一人暮らししてみない?』と。『親元から離れたほうが、あなたはいいんじゃないの?』と言われて。一人暮らしを始めて、4年〜5年経っていって。その時はまだ諦めずに仕事をしていたのですけど。

で、彼女に振られて、それで体調が崩れて。で、保健所の保健師さんに、『山﨑君、近くに作業所というのがあるんだけど行ってみない?』と言われて。でまあ、その後も某作業所ですけど、行って。今の作業所とは違ってフリースクール的なところなので、非常に居心地が良かったですね。

そこに通うようになって、まあ、法律も変わってきて、心の病も精神障害者という枠組みになった時に、私に、はじめてピアカウンセラーというのをやってみないかというお話が市から作業所に来て。『山﨑君は人の話をよく聞く人だし、ピアカウンセラーに向いているんじゃないか』ということを、その作業所の所長が見抜いてくれて。で、そこから、当事者運動の原点が始まったと言っても(いい)。平成10年ぐらいですよね。(今から)17〜8年ぐらい前ですよね。」

ピア:ピア(peer)とは対等とか仲間という意味で、共通の体験と共感を基礎とした仲間(人同士)。

Q.一般就労より当事者活動のほうを選ばれた理由を教えてください

「自分ではピアカウンセラーという仕事ではなくて、同じ病を持った者が、お互いに共感して、共に悩み……、いわゆる、ピアカウンセリングはトイレなのですよね。日常、便秘状態になっているのを、トイレでバーっと吐き出そうという。だから、ピアカウンセラーと名刺に、今書いている人どれぐらいいるか分からないですけど。私が思うには、吐き出させてあげる役割みたいな、共に悩み、共に答えを出す。出すのは本人ですけど、一緒に寄り添って、話を聞いて、共感できるところは共感してですね。

ピアカウンセラーから始まって、(多摩地区のほうで)グループホームを立ち上げるという話が出て、グループホームで働いてみないかという誘いが来たのですよね。クリニック(から)です。

ま、今で言うピアスタッフですよね。私がいたのは先駆けなので、当事者がスタッフになるということは、非常に障壁がありました。グループホームの連絡協議会があるのですけど、そういうところに参加しても、『おいおい当事者が入ってるよ』みたいな白い目で見られたりした経験がありました。

今は、ピアスタッフというのはもうブランド志向みたいな感じですけど、私が当事者で、いわゆる精神の障害を持っていながらグループホームで働くということ自体が、周りから見るとおかしな現象だったみたいですよね。(ピアスタッフは)1年ぐらいやりましたね。」

Q.当事者スタッフの難しさというのはあるのでしょうか

「やはり、引きずってしまうのですよね。自分の立ち位置が分からなくなってくるのです。当事者なのか支援者なのか……。支援者でもあり当事者でもあり、当事者の気持ちも分かるし支援者である自分もいるわけですから、そこら辺のバランスが、当時、相談する相手がいなかったので……。

自分から、もう限界というか、ちょうどうちの父が亡くなる寸前だったので、そちらのこともあって。ま、父親が亡くなって、いったんすべて辞めてしまったというか、活動も仕事も全部。」

Q.自立とはどういうものだと思っていますか

「何をもって自立というのかというと、やはり100人いれば100通りの自立があると思うのですよ。だから生活保護と、障害者年金と、仮にアルバイトなんかしたりしているのも自立だと思うし。デイケアに行って、作業所に行って、地域で暮らしているのも自立だと思うし。家族と一緒に住んでいる人達も、家族支援、当事者支援があれば自立としてみなすのではないかなと。

今、就労支援、就労支援と言っているけど、就労支援の前にまず地域定着支援が必要と思うのですけどね。ピアスタッフというか、スタッフ時代の経験からすると、やはり退院して、地域で生活していても、地域でちゃんと根ざした、地域で生活していく社会資源が今よりも当時は少なかったので、そういう意味でも、地域での定着支援があって、そこで地域で、障害があってもなくても当たり前に暮らせるような社会になって、それから就労支援に行かないと、やはり法定雇用率が上がったとしても、カウントされるだけで、『じゃ、就労定着支援はできているのか』というと、できていないわけですよね。

地域で自分らしく生きられることができてから、就労支援に移行して、そこで仕事ができて、就労継続支援をしなければいけない。でも今も、いろんなスタッフさんを見ていると、就労ありきで、就労継続支援はしているのかなという……。計画相談も、計画相談で非常になんか、悩んでいる人も多いような感じがしますけどね。だから、やはり社会情勢が変わると、非常に作業所にしてもグループホームにしても、地域活動センターにしても、変わってくるのだなと思いますね。」

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