「26歳の時に、僕、精神科の病院で働いていたのですけど、2年目の時に、たまたま境界性人格障害の勉強をするのに夜な夜な本を読んでいたら、パーンと空気がすごい張りつめた…違和感を覚えて。それで、『なんかおかしいな』と思っていたら、どんどんどんどん不安と怖さというか……。いつも講演で話させてもらう表現というのは、風船がどんどんどんどん膨らんでいくという感覚というか……。
『これはどうなってしまうんだ』みたいな怖さがあって。で、音楽をつけたり、テレビをつけたりしてリラックスしようと思ったのですけど、その音さえもどんどんどんどん膨らんでいく風船を割ってしまうような気ぃさえして。
たぶん僕は精神科で働いていたということもあって、勉強していたから、これは発病する……、発病というかなんかおかしいぞと前もって分かりえたというか。で、その間にもどんどんどんどん膨らんでいって、もし、この風船が割れてしまった時に、自制の効かない何かというか、素っ裸で外に出るだとか……。よく言うのが、本で出てくる精神疾患のエピソード的なものというか包丁振り回して外に出るとか、なんかそういう自制の効かない何かを起こしてしまうのではないかというのが、ギリギリのラインで浮かんで、それで同僚を呼んで対処したという感じですかね。
で、その日にすぐ夜中に同僚を呼んで、割れてしまって自制が効かないことで、何か迷惑をかけてもまずいと思って。ちょっと割れてしまってそういうことになったら、救急車を呼んでもらうか。だけど、僕は朝までなんとか割れないように割れないようにしようと思うから、もしなんとか朝までもったら、自分が働いている病院ではなくて、『とりあえず、どっかのクリニックを探して、連れて行ってほしい』ということを言って……。
いやぁ苦しかったですね。もう、寝られなかったですからね。」
「メンタルクリニックだったと思います。どこがいいとかそういうことはまったく分からないから、一応、友達にパソコンで検索してもらって、任せていたというか。
(診察では)『まあ統合失調症か抑うつ神経症ですね』と言われて、薬を出されたのですけど、当時、どんなふうに診察されてどんなふうに言われたかまでは憶えていないですね。そのあと、服薬しながら3年間働き続けていて、3年後に入院したので、その3年間はそこに通っていましたね。
(当時飲んでいた薬は)……ちょっと、そこまでは覚えていない。」
「その間に服薬しながら、やはりストレスというのは、いろいろ、抗不安薬であったりだとか抗うつ薬であったりだとか……。例えば、抗不安薬。不安になりました、それを飲んだからといって不安がなくなるわけでは根本的にないから不安定で、薬を飲んで安定するという……、そのために飲んでいたとしても、ストレスは回避できなくて。だから、薬と、結局は、僕は、その3年間の中でアルコールの世界に入っていって、薬とアルコールの世界に浸かっていた。一応働いてはいたのですけど、帰ったらもう薬とアルコールという……。
(アルコールは)なんでも飲んでいましたね。結局、入院は、(アルコールを)飲んでいて、その3年の間で虫の幻覚を見始めて、家で飲んでいた時に。僕自身がデイケアでアルコール依存症のプログラムも持っていて、一応勉強していたこともあったので、アルコール依存症の特徴的なものが虫の幻覚を見るという……。で、自分自身が(それを)見た時に、『ああ、自分はもうアルコール依存症になったな』というようなそこまでの落胆でもなく驚きでもなく、冷静になったというだけの変な感じですけど。
家(に)帰れば、すぐお酒を飲んで、で、白い壁に点々点々点々点々と黒い虫が貼りついていたり、空中に虫が舞っていて、手で払うのだけれど当たらなくて。で、すごいのですよ。職場から帰って来てすぐ、『あ、疲れた』と思って毛布をかぶって、でなんか当たる感覚があるのです。皮膚にポンポンと当たるような感覚。なんだろなと思って毛布を取ったら、ブワーーーっと虫が広がっていて。ま、たしかに幻覚ですからね。1回だけ、当たる感覚というのはあって……。」