「その時の入院というのは、『棺桶に片足つっこんでしまっている』みたいなものを感じたのですよ。（病院で）働いていても、長期入院の方とかもいましたし、そういうことを見てきたので、社会的入院と言われる。もしかして、僕はそういうふうな感じになるのではないかみたいなものを感じて。40何錠も飲んだら、最初は、『いつか退院したい』と思っていても、やはりその思いというのは、どんどんどんどん安定剤、安定剤で、それ自体が安定されていくのか……。表現が間違っているかもしれないけど、意欲というか（が）なくなっていくというか、消してしまうのではないかなと思って、退院する意欲というか（を）。

だけどそこでは、4か月経った時に、僕はあったのですね、ちょっとだけ、まだ自分として意識できる感覚が。それが救いだったかもしれないですけど。でも、呂律（ろれつ）は回らない、目はとろんとしています、10分も歩くのがしんどいです。だけど、ここで出て行かないと、もう社会的入院になるかもしれない怖さを。だから僕は（病院で）働いていて、長期入院の方を見ているから僕は動けたけど、それを知らない患者さんとかは、動くも動かないも判断のしようもなく、ただ自分の症状を良くしてほしいというようなことで、ずっといたり……。

4か月は知らぬ間に経っていて、僕の思いというのは、4か月の間にいちばん僕は……、精神疾患になる前は運動することで、自分は生きている感覚であったり、例えば嫌なことがあったとしても、走りに行くと昇華されていくとか、そういって自分をコントロールしていたというか。それは、1つの自分の大切な表現媒体だったのですけど、それが10分も歩けなくなってしまった時に、その表現媒体が失われて、いわば、生きがいみたいな、それがなかったら自分はちょっとしんどいみたいな入院生活であって、それで途方に暮れていて。で、『どうして生きていこうかな』みたいな感じだって。

その時に僕は閉鎖病棟でもなく、開放病棟だったので、それでも。病院の前に野原があって、そこで10分というかゆっくり歩いて、空を眺めて寝転んでいたり……。その時に、『僕は青空を眺めている、雲は風に身を任せている、そんなふうに生きてみたい』というフレーズが、さらぁと降りてきた瞬間に、『あっ』と思って。いろいろな思いというか感情というかそういうものを、体を動かすことで昇華したり表現したりしていたけど、言葉を紡ぐ（つむぐ）ということでも、ある新しい表現媒体というか（を）そこで感じて、それで病室の中で詩を書き始めていたというか……。」

「（その後）同じ病院ではないのですけどね。ストレスに弱くなったというのか、社会から逃げるように入院したりということもあったし、仮面をかぶって先生のところへ行って、『どうですか、最近どう？』と言われて、『あ、大丈夫です』と言って終わろうと思ったのです。終わって、1か月分の薬をもらって、全部飲んでしまおうという思いにもなっていた時で。その時に、『どう？最近どう？』と言われた時に、言葉が『大丈夫です』さえ出なくて、涙だけが流れて。で、先生が、『2週間でもいいから、休んだほうがいいんじゃないか』というような入院であったり……。

僕は、自分の病院では人格障害と言われたのですよ、次は。で、『この薬は必要ないから抜きますね』ということになった時に、僕は、いえばその精神薬というか薬物依存みたいにさえなっていたのか、『先生頼みます、その薬だけは抜かないでください』みたいな（ことを）言ったのですね。だけど『抜く。これは必要ないから』というような感じで抜かれたのを憶えていますけど。

（症状の回復？）あまり憶えていないのですよね。だから……良くなるということが、何をもって良くなるというのか。症状が良くなるのと、自分が訴えているものが、先生、主治医に訴えているものが、『癒やされる』という言葉というのか……そういうことを求めていったのか。」