統合失調症と向き合う

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笠原 健さん
笠原 健さん
(かさはら けん)
1977年(昭和52年)生まれの38歳(収録時)。26歳、精神科病院で作業療法士として働いていた時に症状が出現。その後、病院を退職し、現在は、入院している患者さんの退院準備プログラムの手伝いや精神疾患の啓発などピアサポーター活動を行い、アーティストとして絵や詩も書いている。
「詩人artistけんぼーの世界」はこちらからご覧ください→https://kenbo1219.jimdo.com/
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12メッセージ
Q.同じ病の方へメッセージをお願いします

「ピアサポーターとか、退院するお手伝いをする中であったり、自分が回復してきた中で気づいたというか、持論でしかないのかもしれないですけど、やはりあの時、ああいうことがなかったら、自分は病気にならなかったのにと、過去にしがみついている人が多いというか、精神疾患になった人がですけどね。だけど過去って変わらない、状況も変わり得ない状況の中で、僕もずっとお兄ちゃんと比べられたことであったりいろいろなことを、大の大人になっても訴えていて。

それは、いろいろな出会いの中で、過去は変わらないけど過去に対する意味づけだけは変えられるとか、人は変わらないけど人を変えるきっかけだけは与えられるということも教わってきた中で、他にもいろんな学びとかいろいろ気づきがある中で、まあいえばお兄ちゃんと比べられたという現実、過去、現実に対しては、お兄ちゃんがすごく優秀だったから比べられることによって自分の持っている能力が最大限引き伸ばされたのかなというふうな捉え方をした時に、過去という現実としては比べられたということがあるけれども、嫌な感情が出てこなくなったというか。

だから、過去にしがみついている間は、僕は回復段階には入っていかないのではないかなと。だからそれを、例えば、(回復段階に)入っていかないよと言ったとしても、しがみついているのはその本人だから、しがみついていることさえも気づいていないというか……。だからそれに気づいた時から変わっていくものだと、僕は思うのですけど。

だからきっかけだけは与えられるというのは、『はい、今、言いました、今、分かってください』ではなくて、いつかそういう日が来た時に、『あ、前にこのことを言っていた、こういうのはこういうことか』みたいな。だからいつ花が開くか分からないけど、種を蒔いているというか。種を蒔かないと花も咲かないし。」

Q.家族にはどのように対応してほしいですか

「家族会でも、僕は、すごく家族の方に、『はい、息子さんが統合失調症になりました。はい、統合失調症の本を買って、どんな症状が出るんだろう』というの(親)は、ほとんどいないですよね、みたいなことを思ったりするのです。それは話すのですけど、僕の親も現実として、それはないですと言って。ただ単にメディアで出されているような、『精神疾患ってこんなふうになるよね』というぐらいで、僕を見ていたというか。

絵とか、僕、何回か個展をやらしてもらっているのですけど、最初の時なんて、『やめてくれ』と言われたのですね、親に。それは、病気が描かせているようなものだから、いえば個展をすることで精神疾患であることを公表してしまうような。やはり世間体というものもあったのかもしれないですけど。今もあるのかもしれないですけど、もう離れて暮らしているので……。主治医から、一緒に暮らしていたら精神的安定にならないから離れて暮らしたほうがいいと勧められたのですけど。

その主治医、先生の所にお母さんを連れて行ったのですね、個展に関する考え方というか。先生が『お母さんね、笠原君みたいな精神疾患を持っている人は、うちにはわんさか入院しています。病気がそういうふうな詩や絵を描かすっていうんだったら、自分の病院はどうなると思いますか?』と言ったのですよ。お母さんは全然分かっていなくて。『美術館になるんですよ』と言ってね。『これは笠原君の才能であって、そこを認めてあげないとどうするんですか』と言ってくださって。

病気になる前の元気だった頃だとかの姿に、また枠づけしてしまうというか、病気が治ってほしいとか。だけど、なりたくてなったものでもなくて、治る、治りたいとも思っていても、うまくいかなくて、病気に障害者になってしまって申し訳ないという思いがあるのに、拍車をかけて、親もそういう見方をしてしまえば、行き場がないというか……。だから今の、あるがままを受け止めるというか。今できることは何かな、みたいなものとか。」

Q.今回、インタビューにご協力くださった理由をお聞かせください

「誰かが一人だけ動いても偏見はなくならないよと言う人も多くおられると思うのですけど、一人動かないと、『自分もそう思うんだよ』とか、協力というか同じ思いの人が出てこないというのも現実だし。

何かしら、ツールというか、僕は絵を通して、講演を通して、ピアサポーターを通してとか、根っこの部分は同じ思いであって、枝分かれしていってツールとしてあって。その1つの媒体というか、ツールの一つとして、今回のインタビューでまた違う世界というか違う所に、いろんな方に話が伝わっていって、偏見が和らいで……。精神疾患の方も、生きづらい世界ではなくて、少しでも生きやすい世界に変わっていけばなという思いで、インタビューを受けさせてもらいたいなと思いました。」

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