「最初に一時的ストーマ(人工肛門)を造ったときは、肛門の痛みがなくなってすごく快適だったので、ストーマケアを覚えることには一生懸命でしたけど、ストーマ自体はそんなにこだわったりはしなかったですね。すんなり受け入れました。
ただ最初の頃、やっぱりにおいとか音にすごく神経質になって、1年ぐらい出かけたりしていなかったです。結構、いろいろ失敗をしたりしました。外で漏れちゃって2〜3時間歩いて帰ったりとか。冬の寒い中、外でオストメイト対応トイレがなくて、多目的トイレの冷たい水でお腹を拭いて、洋服を買い換えたりとか。そういうことも何回かありました。今は滅多にないですけど。
ケアに関して慣れてきたのもあるんでしょうね。それと多分、漏れていた時期は装具が合わなかったり、術後間もなくでまだ状態が落ち着いていなかったりというのもありますね。今は安定しています。だから自分に合った装具が見つかれば、日常生活に関しては本当に支障なく過ごせると思います。」
「精神的な面に関しては『何年経ってもストーマを受け入れられない』という人も中にはいらっしゃますし、もう術後すぐに自分のストーマを受け入れたという方もいらっしゃいます。それはもう個人差があるので、その人なりの時間というのがやっぱり必要なのかなとは思いますね。
日本オストミー協会(ストーマをもつ患者さんのための障害者団体)の事務局でいろいろ相談を受けていたときに、ある人が『ストーマは日常生活を阻むものではない。よりよく生きるためにストーマを造った』とおっしゃったんですね。『これはすごい』と思って、その方に『その言葉を自分自身のコンセプトとしていただいてもいいですか?使ってもいいですか?』とお聞きしたら、『どうぞどうぞ』と言われて。それからことあるごとにいろんなところでそれはお伝えしたいなと思っているんですよね。『よりよく生きるために』ってすごいじゃないですか。だから『ストーマを作ってよかった』とかそんなきれいごとを言うつもりはないですけど、今は支障なく過ごせているので、いいかなとは思っています。」