「家族は4人おって、女の子が2人です。今は別れて、元妻のほうに2人とも行っています。
私の病気のことも話はしていて、『元気じゃない?どこか悪いの?』という感じです。だから私も『そうだよ』と言って、もうあまり心配かけないようにと思っています。病院にも、『何かあってもいよいよだめなときだけ連絡を取ってくれ』と言っています。病院も『それでいいの?』と言うけん、『そいでいいですよ』と言っています。だから私がいつ入院して、いつ手術してというのは私も言わないから家族は知りません。友人関係にもあまり言いません。
最初仕事をしていた頃は、やはりいろんなメーカーが見舞いに来るので、もう見舞い疲れして、逆にまた悪くなったことがあります。それがあったもので、『もう見舞いはいいよ』と言っていて、たまに知った顔がひょこっというくらいがいちばん楽です。
それと入院時にちょっと面白いエピソードがあるのです。お見舞いに来る人は、果物やらお菓子やらお見舞いの品を持って来ますよね。そうすると私はまず食べられないので、ベッドサイドのテーブルに1日置いておくと、次の日に看護師が来るのです。『林さん、これ置いておいたら悪くなるよ、片づけておくね』と言うので、『ああ、いいよ』と言うのです。そうしたら次の日、『あれおいしかったー』と。いつもその手ですよ。誰かが持ってきた物を必ず持って行く。特に夜勤組がね。だから病院におっても、看護師たちと仲よくなるから、いろんな師長たちとも仲よくなる、先生たちとも仲よくなるで、家族が別にそばにいなくても、そうはこたえないです。私の友達にも、(奥さんと)別れてからひとりになって、『なんか淋しいー』という連中がいるんですけど、私はそれがないのです。病院に行けば誰でもいるし、メールが来たりするので。
この間の誕生日もバレンタインも、ちゃんと準備してくれているのです。ちょうど私に合ったようなチョコレートや贈り物をしてくれます。腎臓の制限食をしているので、糖分が少なく塩分がない苦っぽいチョコレートが入っていました。『1 日にこれだけしか食べちゃいかんよ』と言ってくれます。それを守って食べているので、バレンタインでもらったのがまだありますよ。そういういろんな人との交流があるから、そう悲観することはないです。」
「ただひとつ不安なのは、今から先のことです。年をとってひとり住まいでもし何かあったときに、誰が病院に連れて行ってくれるのだろうと、それがいちばん不安です。あと身の周りのことは、訪問看護や介護関係の方がいるので、そういうふうにはなるけれど、夜中に悪くなった、動けない、電話もかけられない、となったときのことだけですね。そうなったらどうなのかなと思います。何とかするだろうとは思いますけど。不安て、それくらいですよ。食事とかいろんなことに関しても別に問題はないし、経済的にも生活保護と年金があるからそれでやっていけるし、贅沢をしなけりゃ、そこそこ楽しみながらちゃんと生きていけるのです。」
「生命保険は、ある保険会社のものに入っていました。最初の手術で“がん”と名前がつけば出ますよという話で、診断書に先生が括弧をつけて(がん)と書いてくれたのですけど、最初が良性腫瘍だったので、そう書いてくれたけど、出ませんでした。それで次に入院したときは、その保険会社の調子がおかしくなって、結局はうやむやになってしまって、会社が潰れてしまいました。だから生命保険は何も使えなくて終わりです。それを変わった保険会社に言うと、保険金を納めてくれれば入金しますというのですが、それが今までの保険金から比べたら倍なのです。
市のほうに相談したら、『医療はもう生活保護のほうで全部面倒をみるから、心配せんでいいですよ。だから保険はもう入らんでいいですよ』というわけで、保険はもうまったく入っていません。何か騙されたような格好だったけれども、もう使っていません。まあ、捨てる神あれば拾う神がおるということです。」