「すぐに仕事に復帰していますので、仕事自体での変化はなかったのですが、どちらかというと自分の気持ちというか、考え方が変わってきました。働き方や仕事に対する考え方というよりも、生き方に対する考え方ということになると思うのですが。
私の場合、幸いごく初期で見つかったので抗がん剤も使っていませんし、がんということについてはそんなに大きなダメージはなかったと思うのです。ただそのがんを体験したことによって、自分の残りの人生、残された時間を意識するようになりました。具体的に言うと、今まではいつかやればいいんじゃないかと、5年後、10年後とかなり先に置いておいたことを、やはりもう少し早いタイミングで、たとえば3ヵ月後とか半年後とか、近くにもっていきたくなったのです。結局それが転職にもつながるのですが、残りの人生を考えたときに、『このままこの仕事を続けていていいのかな』というところで、『何かもっとやりがいを感じられる仕事がしたい』と思うようになりました。 大きな安定した会社でしたので、会社自体にはもちろん何も不満はなく、本当に恵まれた環境だったと思います。ただ私の中で『何か違うことをしたい』という気持ちが強くなりました。」
「結果として、勤めていた会社を退職することになります。辞めた時点では、何をしようかというのは決まっていなかったです。退職したあと1年間の充電期間を経て、たまたま障害をもつ方の就職支援の会社のお仕事をすることになりました。そうしたら、その仕事がまさに自分が考えていた“やりがい”ということをすごく感じられる職業だったわけなのです。
それは私のそれまでの企業での経験と、やはり病気を体験したことで、障害をもった方の気持ちを理解して、さらにサポートをして就職に結びつける、それがうまくいったときの充実感というのが、私が思っていたやりがいにまさにぴったりだったのです。それ以来、これを天職と思って続けています。
あとはたまたま自分で会社を起こすきっかけが得られましたので、さらに幅広く、障害をもった方だけではなく、いろんな難病患者さん、がん体験者の方々の就職相談を幅広くお受けしています。」