がんと向き合う

大腸がん 小腸がん 肺がん 膵臓がん 乳がん 子宮頸がん 卵巣がん 緩和ケア +plus イベント おしらせ
稲守 朋子さん
稲守 朋子さん
(いなもり・ともこ)
静岡県立大学大学院生活健康科学博士課程在学中。24歳(2004年)のとき、極度の腹痛により緊急入院、片側の卵巣を摘出し、卵巣がんと診断される。手術後、1年間の抗がん剤治療を経て、現在は経過観察中。趣味のテコンドー(格闘技)を再開し、2007年には世界選手権大会に日本代表の一員として出場、女子団体戦で金メダルを獲得した。
movieImage
2実家の近くに転院

「ただの良性腫瘍だったら多分、十何日後には退院していたと思うのですが、そのまま抗がん剤治療に入るという話になり、もう入院しっぱなしでした。6月20日頃まで最初に入院した病院でずっとお世話になり、抗がん剤治療が控えている以外は何か治療が必要な患者というわけでもないのですが、ひたすらお世話になり、一旦退院して実家のある名古屋に転院してまたすぐに入院しました。」

●抗がん剤の副作用

「いわゆる抗がん剤の副作用と言われるものは、ひととおり経験したと思います。まず髪の毛が全部なくなって“つるっぱげ”になりましたし、あとは吐き気、悪心、食欲不振、口内炎、もうだいたい全部感じました。痛みと吐き気と脱毛がいちばん激しかったですね、あと食欲不振。

クール*を重ねていくごとに(副作用が)どんどん全身に広がっていくのです。最初に来たのは足でした。朝起きて顔を洗おうと思い、ベッドから降りたときに足の感覚が鈍くなっていて、何だかずきずきと痛いのです。『何だこれ?』と思いながら顔を洗いに洗面所に行くと、洗面所のにおいがすごく気になったりして、その洗面所の独特のにおいや、消毒用のアルコールのようなにおいですぐに吐き気がきて『これ(が副作用)か!』と思いました。足が痛いのもこれだったのかという感じです。それがクールを重ねるごとに手にきて、だんだん体全体にきて、最後のほうは『もう、もういいです』と言って一日ベッドの上でゴロゴロしているとか、そういう感じでした。」

*クール・・・化学療法の治療(投薬+休薬)期間をさす単位。サイクルともいう。たとえばある薬剤を3週間ごとに投与する場合は、その3週間を1クールという。たとえばその薬を6クール投与するとは、つまり3週間×6クールで18週間かかることになる。
●無理だ。痛いです!

「3クール目ぐらいから抗がん剤を打っている最中にすごい痛みがきてしまい、耐えきれなくなりました。そのときだけは無理だと思い『痛いです』と言って、座薬である程度(痛みを)緩和してもらいました。それ以外の抗がん剤の痛みは、それほど強くないロキソニンとか普通の痛み止めを打ってもらい、あとはある程度痛みを我慢してしまっていました。というのは入院して抗がん剤を受けるというと、やはり周りは私よりもお年を召した方が多く、すごく辛そうだったのです。それで自分でまだ死ぬほどの痛みではないなと判断した場合は、周りも辛そうだし、看護婦さんたちも忙しそうだし、まぁ我慢すればいいかと思い、『いける、我慢できる』というときは我慢していました。別にそれがいいこととか悪いこととかではなくて、何となく我慢できるから我慢しちゃえという感じでした。

抗がん剤で副作用が強く出た人はだいたいそうだと思うのですが、『治しているはずなのに、なんでこんなに苦しい思いすんねん?』と思うと思うのです。抗がん剤が効いてきているというのが感覚で分かれば、たとえばCTの画像でがんが小さくなっているとかが見られればいいのでしょうが、私の場合、卵巣は摘出してしまい、腫瘍マーカーは上がったままで、腹水にもがん細胞があるとは言うものの、目に見えるものではなかったので、『いやぁ、効いている効いている』と感じることはほぼなかったです。腫瘍マーカーが少し下がっているのをエクセルでグラフ化して、ニヤニヤしていたぐらいです。」