「NIRS(Near-infrared Spectroscopy)というのは、頭文字のN I R Sですけど、近赤外線スペクトロスコピィという難しい名前なんですね。検査の名前(種類)としては、光トポグラフィー検査と言っています。光を使って脳の働きを見るというような検査です。
精神科の病気の診断の補助に使えるだろう、というようなことが先進医療で認められたんですね。先進医療というのは、日本の厚生労働省が認めている制度で、研究と診療の中間段階、ただの研究段階ではなく一歩進んで診療のほうに少し近づいたと、それを先進医療と言っているんですね。それに光トポグラフィー検査を用いた『うつ症状の鑑別診断補助』、これもちょっと難しい名前ですけども、去年(2009年)の4月から採用になりまして、今、少しずつ行われているところです。」
*先進医療:「厚生労働大臣が定める高度の医療技術を用いた療養その他の療養であって、保険給付の対象とすべきものであるか否かについて、適正な医療の効率的な提供を図る観点から評価を行うことが必要な療養」として、厚生労働大臣が定める「評価療養」の1つとされています。
具体的には、有効性及び安全性を確保する観点から、医療技術ごとに一定の施設基準を設定し、施設基準に該当する保険医療機関は届出により保険診療との併用ができることとしたもの。
(厚生労働省のホームページより抜粋)
「『うつ』と言いますと、すぐにうつ病とお考えになるかもしれませんけども、症状としての『うつ』というのは、いろんな病気に出てくることがあるんですね。もちろんうつ病の場合も出てきます。それから躁うつ病、双極性障害と言いますけども、躁うつ病のときにも出てくるんですね。統合失調症ですけども症状としてうつも出てくるとか、いろんなことが原因になって、いろんな病気が原因になって『うつ』の症状が出てくるんです。その『うつ』の症状がどんな病気に基づくものかということを診断する。そのときに、今、お話ししたNIRSが役立つということが、先進医療で認められたということですね。」
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今、ご覧いただいている映像(図3)は、大勢の方の平均のデータですけども、左が健康な方で、右が統合失調症の方です。検査を行っているときの脳の働きを動画として示したものなんですね。そうしますと、健康な方では赤くなって脳が活発に働いているということが分かるわけですけども、統合失調症の方では青いままで脳があまり活発に働いていないということが分かってきます。こんなふうにして、脳の働き具合というのが分かる。それによって、統合失調症であるとかそういった診断に結びつけることができるということなんですね。」
「検査そのものの時間は3分間ぐらいでものすごく短いですね。その前後の準備の時間とか説明の時間を入れましても、20分とかそのくらいでできる検査です。
精神科の病気の脳の検査と言いますと、研究としてはいろいろ行われていますけれども、研究のために非常に大がかりな装置が必要だったり、あるいは長い時間かかってしまったり、場合によっては少しX線検査を使ったりということがあるんですけども、この光トポグラフィー検査は、検査(時間)も短い、装置も小さい、それで光ですから全く安全だということで、そういった意味で普段の診療の中でやる検査としては、簡便で良いと思っています。」
「先進医療という制度では、患者さんからご希望があった場合に検査ができるとなっています。ですので、今、認められた施設には大勢の方が検査を受けたいといらっしゃっていて、むしろ検査の予約などはいっぱいでなかなか応じられない、私のところもそうですけれども、そういう状況です。
今のところ、全国で(NIRSが)できる施設は5施設です。ですけども、今、いろんな施設が申請していまして、だんだん認められていますので、できる施設がどんどん増えていくと思います。」