統合失調症と向き合う

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福田正人さん
福田 正人さん
(ふくだ・まさと)
群馬大学大学院医学系研究科神経精神医学
准教授
1983年東京大学医学部卒業後、東京大学医学部附属病院精神神経科に入局。同大学講師を経て、1998年に群馬大学大学院医学系研究科神経精神医学准教授(現職)に就任し、現在に至る。主な研究として、統合失調症を始めとする精神疾患の神経生理学・脳機能画像研究に従事している。編著・訳書に『精神疾患とNIRS−光トポグラフィー検査による脳機能イメージング』(中山書店)、『精神科の専門家をめざす』(星和書店)、『統合失調症の認知機能ハンドブック』(南江堂)、『もう少し知りたい統合失調症の薬と脳』(日本評論社)などがある。
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6統合失調症の薬物治療
Q.幻覚、妄想になぜ抗精神病薬が効くのですか

「非常に難しい質問ですね。統合失調症に使うお薬を“抗精神病薬”と言います。抗精神病薬の働きの1つは、今、言ったような幻覚とか妄想を治めるというような働きがあるんですね。それはどうしてかと言いますと、脳の中の“ドーパミン:神経伝達物質”という物質があります。この働きを(薬で)抑えることによって、幻覚や妄想が治まってくるというふうに考えられているんですね。

じゃあ、ドーパミンという物質を抑えるとどうして幻覚や妄想が治まってくるかということですけども、ちょっと難しいことですが、もともと人間というのは何か物事をするときとか考えるときとかに予想して行うわけですよね。自分が行動するとき、自分がしゃべるとき、自分が考えるとき、いつも予想しているんですね。で、普段の健康なときですと、自分がやったことについて、『あ、予想通りだ』という感じになりますから、安心できるわけですけども、ドーパミンが働き過ぎてしまいますと、『予想通りじゃない』というふうにびっくりするような形になるわけですね。そうすると、本来はご自身が考えたことがそうじゃなくて、あたかも外から聞こえてくるような声のように聞こえてきたり、そういうことがあるわけです。ですから幻覚や妄想というのは、どうもそういう仕組みで起こってくると…。

逆にドーパミンの作用を抑えることによって、幻覚や妄想が治まってくるというようなことが考えられています。ですから、患者さんの実感としては、幻覚や妄想が消えるというよりは、幻覚や妄想みたいなものはあるんですけども、そのことにあんまり動じなくなると言いますか、無関心になると言うか、気持ちが動かされなくなると言うか、あるいは行動に結びつかなくなると言うか、そのような感じで冷静に対応できるという感じになってくるという方が多いようですね。」

Q.抗精神病薬にはどのような種類があるのですか

「抗精神病薬もたくさん種類があるんですね。1つ大事なのは、たくさん種類があるのはどうしてなのかということなんですけども、ものすごく個人差があるんですね。統合失調症の方に薬を使う場合に、効き目の面でも個人差がありますし、副作用の面でもすごく個人差があるんですね。

どうしてかと言いますと、それは脳が非常に複雑な臓器だからなんですね。脳の中にはたくさん神経細胞があります。それにどうも1つ1つ個性があるようなんですね。お一人お一人違うと。ですから同じ統合失調症という病気であっても、この方にはこういうタイプの薬が良いとか、別の方には違うタイプが良いとか。そういう個性がある、個人差があるということを理解していただくことが、まず大事だと思うんですね。

その上で、薬の分類としては、『定型抗精神病薬』と『非定型抗精神病薬』というふうな分け方をすることがあります。

定型抗精神病薬というのは比較的、昔から使われているお薬。非定型抗精神病薬というお薬は、比較的、最近使われたお薬なんですね。新しいお薬はどちらかというと、副作用をなるべく減らそうとか、あるいは陰性症状のほうにももう少し効き目が期待できるかとか、先ほどの生活の障害にも効果が期待できるかとか、そのようないきさつから開発しましたので、全体としてはそのような効き目がやや強いかもしれないですけども。

もちろん世界的な全体的な流れとしては、非定型抗精神病薬のほうになっていますけども、個人差ということを大事にしないといけませんから、患者さんによってそれぞれ向いた薬がある。それをむしろ患者さんと医療者が協力しあって、お一人お一人に合った薬を見つけていくということが大事だと思います。」

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