「私は、患者さんにぜひ治療の中心になっていただきたいというように思っているんですね。治療と言いますと、なんかこう医師が治療をするとか専門家が治療するというように思われるかもしれませんけども、けしてそうではないんですね。やはり治そうとかこういうところを克服したいと、患者さんご自身が思うことが出発点なわけですよね。
これは、統合失調症に限りません。精神科の病気もみんなそうですし、身体の病気もみんなそうだと思うんですね。まずご自身が中心になって、『こういうところを良くしていきたい、改善していきたい』と思っている、それについてわれわれ専門家として、いろんな専門的な知識で援助する、あるいは技術で援助するというようなことが、本来あるべき姿だと思うんですね。ですから、ご自身がこういうところが苦手だから良くしていきたいと思って、患者さんご自身が、当事者ご自身が治療の中心になるというか、そういうふうになっていただけると一番良いなあと思っています。」
「たしかになかなかご自身の症状のことを言いにくいとか、上手に説明しにくいという方もいらっしゃるんですね。そうした場合に症状のことばかり話そうとしますとね、余計話しにくいんですよね。むしろ患者さんが関心のお持ちのこと、どんなことでも良いんですけども、趣味のことでも良いですし、昔話でも良いですし、それから友達関係でも良いですし、患者さんが話しやすいことを話していただくと、その中からいろいろ治療のヒントが見つかるということがあります。一見すると世間話をしているように思われることも、実は役立つようなことがある。そんなふうに思っています。」