「抗精神病薬と言われている薬は、飲み薬がありますね。飲み薬では、一番ありふれている話としては錠剤があります。錠剤の中で、おおまかに言って2つの錠剤があると思います。1つは普通の錠剤ですね。もう1つは口腔内崩壊錠 と言われている錠剤が最近発売されるようになりました。有名なのはオランザピンのザイディス錠で、これが非常によく使われていますが、他の薬でも口腔内崩壊錠が使われ、発売されていますね。
あるいは液剤、水薬ですね。これはリスペリドンの液剤が最初に作られて、今でもよく使われています。(そして)日本でよく使われるのですが、粉ですね。散剤、粉末ですね。これは、世界的には非常に珍しいのですよね。世界的にほとんど粉の薬は使わないのですけど、日本は漢方薬の伝統があるせいですかね、粉の薬、いろいろ混ぜるというのが、一部のお医者さんが好むといいますか、そういう伝統があるのも事実ですね。
表3 抗精神病薬の投与方法、薬の形 クリックで拡大します |
ですから、口から入れるのを経口投与と言うのですが、経口投与と非経口投与があります。もう1つ、非経口投与の中で重要な投与法として、デポ剤というのがありまして、持効性注射製剤と言われていますが、これはむしろ外来の再発予防に定期的に使う注射製剤ですね。」
「それぞれのメリット・デメリットがあるのですけども、錠剤を飲むというのが一番基本的な治療法であって、薬を飲むというのはごく自然な話ですし、一番多くの方が利用されているわけです。けれども、錠剤ですと、例えば1日1回1粒飲むとかでしたら楽かもしれませんけども、それでも続けるのはなかなかたいへんですね。自分が風邪になった時のことを考えてみれば分かるのですけども、風邪薬を1日例えば2回でも3回でも、何日か続けるというのは、具合が悪い時は続けるかもしれませんが、良くなったらたちまちやめるというのが一般的な形じゃないでしょうかね。
統合失調症の薬は、具合が悪い時ではなくて、再発予防しなければいけないのです。良くなってからでも何年、場合によっては何十年でも続けなければいけないというのは、とてもたいへんなことですね。それを患者さんは要求されているわけですから、そこを考えなければいけない。
そうすると、自分で病気だということがある程度分かっていただいて、この薬が自分にとっていいのだと分かって、お薬を根気よく飲んでいただければ、もちろん良いのですけど、錠剤でもあんまりたくさんの数があったら飲みづらいですし、1日何回も薬を飲むというのはとてもたいへんですよね。で、飲み忘れもあるかもしれない、飲むのが嫌になってしまうということもあります。あるいは、仕事をしていて、どこかお店で働いて、お昼の薬を飲まなければいけないといっても、とても他の人の手前飲めないと。トイレに隠れてこっそり飲むみたいなこともあるかもしれない。そんなことでは、とても飲むのが嫌になってしまうということもあるかもしれない。だから、薬、錠剤に関しても、できるだけ飲む回数を少なくしていって、飲む錠剤の数を少なくしていきたいという流れがありますね。
例えばオランザピンは代表的な薬で1日1回だけ、1粒か2粒で済みますね。リスペリドンも基本的に1日1回でいいと言われている薬ですね。これも薬の作用の時間から見ると1日1回で十分やれる薬です。アリピプラゾールもまったくそうで1日1回でいい薬。ですから、その辺の代表的な統合失調症の治療薬というのは1日1回で済むのです。クロザピンはもうちょっと、1日何回かに分けなければいけない薬です。もう1つクエチアピン(商品名:セロクエル)という薬があります。これもとても良い薬の1つですけれども、割合何回かに分けなければならないというふうに言われている薬ですね。
ですから、錠剤に関しても1日1回で済む薬と1日何回かに分わけなければいけない薬があって、それぞれ決めがあるので、それに従って飲むというのが、正しいのでしょうね。」
「液剤とか粉だと、なかなか飲みづらいのは事実ですね。特に粉は飲みづらいですね。ですから、特に再発予防になったら、できれば錠剤のほうがいいかもしれませんね。」