統合失調症と向き合う

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藤井康男さん
藤井 康男さん
(ふじい・やすお)
山梨県立北病院院長、
慶応義塾大学医学部精神神経科客員教授
1977年慶応義塾大学医学部卒業。1978年4月 山梨県立北病院に勤務。1985年9月 医学博士を授与。1985年8月〜1年間 フランスのバッサンス公立病院へ留学。2003年4月山梨県立北病院院長に就任し、2007年4月より慶應義塾大学医学部精神神経科客員教授。
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2抗精神病薬の誕生
 「1950年代:クロルプロマジンの登場」
●1950年代:「クロルプロマジン」の登場について

表1 統合失調症の主な治療薬(抗精神病薬)の登場
表1  統合失調症の主な治療薬(抗精神病薬)の登場
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「1950年代というのが、非常に革命的な時代で重要と思われている。3種類の薬が世の中に出てくるのです。1つは抗精神病薬で、一番最初の薬は、クロルプロマジン(商品名:ウインタミン、コントミン)です。

同時に、イミプラミン(商品名:トフラニール)という抗うつ薬が出現していますね。だからうつ病の治療ができるということ。

もう1つは(精神)安定剤ですね。マイナートランキライザーと言いますけども、クロルジアゼポキシド(商品名:バランス、コントール)という薬が出てきた。その前に、メプロバメート(商品名:ミルタウン、アトラキシン)という薬がありましたけども、とにかく(精神)安定剤が出てきた。今の精神科の薬物治療の根幹になる薬が、1950年代に次々と出てきたのです。」

●クロルプロマジンの効果

「重要な展開はクロルプロマジンの発見です。これはたまたま戦争というものが世の中にたいへんな被害を与えるのですが、その時に、戦争は勝ち抜かなければならないし、犠牲を少なくしようと(研究が進むのですが)、例えば戦争で怪我をすると、要するにショック状態になる、それだけで死んでしまうのです。出血するとかではなくて、ショックで死んでしまう。そのショックをなんとか和らげたらいいのではないかということで、いろんな研究が進む中で、クロルプロマジンという薬が生まれてきて、自律神経系を非常に安定化させる薬として注目されてきた。クロルプロマジンは、最初は、外科的な対応として作られたのですが、精神科の病気にも使えるのではないかという発想が生まれたのが、1950年代の前半ですね。

フランスで精神科への(クロルプロマジンの)応用が始まったのですが、それまで統合失調症の方に対する治療というのは、さっき言ったショック療法がありましたけども、薬としては、かなり興奮されている患者さんを眠らせることができたのです。いわゆる睡眠薬を投与して眠らせてしまう。ただ、起きたら相変わらず患者さんは興奮しているし、病気はちっとも治らないと。ずっと寝ていたのではリハビリテーションも何もないですから…。だけどクロルプロマジンという薬は、患者さんの興奮が和らいで落ち着かれて、同時に妄想も治ってきて、その上で、起きている状態、つまり何かできる状態でそのまま続けられるような、そういう効果を持っている薬です。

同時に、その薬(クロルプロマジン)を投与していると分かったのですけど、それまでずっと病気の世界に引きこもっていて、ちゃんと話もできなかった、何を考えているか分からない方が、非常に穏やかになられて、ちゃんと自分の想いを口にできるようになってきたのです。だから、このクロルプロマジンという薬が出てきて、それまで、到底治療ができなかったような患者さんに、治療の可能性が生まれたということでは、たいへん大きな展開があったのです。」

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