統合失調症と向き合う

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岡田久実子さん
岡田久実子さん
(おかだ・くみこ)
2人娘の長女が統合失調症の体験者。治療を受けるも病名や統合失調症に関する情報がない中、娘が再発。いくつか病院を変えながら回復を目指した。親として辛い経験をするが、現在は、娘の症状も安定し結婚、育児をサポートしている。さいたま市精神障害者もくせい家族会会長として、今後の精神科医療や社会のあり方への提言をしていきたいと語る。
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82度目の再発

「(再発は)もう1度あります。

新薬のリスパダールが合うということで、リスパダールに最終的には切り替えて、治療していたんです。作業所にも時々通いながらという状況だったんですが、ちょうど年齢的に、周りのお友達が結婚したり出産したり、下の妹も結婚して出産してというようなことがあって、周りでそういうことが起き始めた時に、やっぱり自分も結婚したい、子供も産みたいというようなことで、すごく揺れたんですね。

そういうことで、お友達と直接会うということは少なかったですけれども、メールでつながっているお友達が何人かいて、そういう情報のやり取りの中で、ある一人のお友達とけんかになってしまって、『あなたとは縁を切るわ』みたいなトラブルがあったことも(原因に)あったと思うんですけども、ちょっと調子が崩れ始めて、それで薬の量が増えたんですね。」

●薬の副作用:胸が張る、躁状態

「そうしましたら副作用が強くなってしまって、女性特有の胸が張るとか、母乳が出るようなところまでいって(注:抗精神病薬の副作用の1つである高プロラクチン血症による症状)、夜、胸が痛くて眠れないというような症状が出てしまったので、先生に相談した時に、また別の薬に切り替えたんですね。その薬が、娘には合わなかった。躁状態になってしまいました。

ほんとに天真爛漫な明るい娘になったんですけど、親から見たら、本来の娘の状態では全然なくて、もう心配な状態でしょうがなかったんです。で、先生にそれをお伝えすると、『この病気は、みなさん、多くの方が、意欲がなくなって引きこもってしまうことで困っているのに、こんなに明るくて、本人も快調だと言っているこの状態で、お母さん、何が心配なんですか? 薬を変えることを、私は一切考えません』というような先生の考えでした。でも、親から見たらどう見たって普通じゃないんですよね。あまり激しく怒ったりということはなかったんですけども、1日中しゃべっていますし、テレビにも答えている、そんな状態でした。それで家族に聞いても、やっぱりちょっと普通じゃないよねぇというような状況だったので、何度も何度も先生にお話し、そのことを分かっていただこうと思ってお願いしたんですけれども、なかなか親の意見も受け止めていただけなくて。それで心配していましたら、その半年間、私ほんとに辛かったんですけど、半年、結局その状態でお薬を飲み続けたんですね。」

●症状の悪化

「その半年後ぐらいに、4年間自分の部屋で飼っていてすごくかわいがっていたうさぎが死んでしまったことが、大きな引き金になったんですけども、またどっと具合が悪くなって、落ち着かなく家の中を動き回ったり、地球破壊が心配だとか、ちょっと非現実的なことを言い始めたり…。

それで、先生に相談した時に、先生が本人を前にして、あなたは年齢の割に考え方がちょっと幼稚すぎると。そんな地球破壊なんていうことをどこで聞いたんですか?とすごく厳しい顔でおっしゃったんですね。私から見たら、完全に症状だったんですけども。娘は『いやテレビで』と言ったら、『そんなテレビなんか観るのをやめなさい。私の言うことを聞かないんだったら、もうここで診察ができなくなりますよ』と、すごく怒られたんですよ。

それで娘は、こんな震えてしまって。帰り道に、『さっき先生はなんて言ったの?』と、もう放心状態ですよね。『もう来るなって言った?』と言うから、『んんん、違うよ』と。私はもうとにかく安心させたかったので、『違うよ、あなたが地球破壊のことですごく心配してしまっているけど、それはあなた1人が心配しても解決することじゃないから、そんなことを心配しなくても大丈夫だよということを話してくれたんだよ』と。大丈夫だよ、心配すること何もないよと言いながら、もう、私は絶対、病院を変えようというふうに決心して帰りました。」

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