「ご家族の方には、やっぱり絶望しないでいただきたいということが一番ですね。この病気であっても、きちんとした情報を得て、病気のことをきちんと理解して、ちゃんと治療してくださると信頼できるお医者様と出会うことで、かなり改善できる病気に、今、なってきていますから、うしろ向きにならずに、本人を支え続けるように、力を蓄えていっていただきたいです。
そのためには、やはり同じことを経験した人達と出会うことがすごく大事。ご本人もそうですけれども、同じような体験をした人達と出会って、いろんな情報を得ることは、すごく大事だと思います。本も一杯出ていますし、インターネットでもいろんな情報はありますけれども、やっぱり生の情報と常に触れ合っていると、本に書いたことを自分の知識として頭の中に置くことはすごくできるんですけども、じゃ、それを自分の生活の中に活かすというのはなかなか難しくて、それを同じ体験した人と常にいろいろ話し合っていると、『本に書いてあるこのことって、もしかしたらこういうことかなあ』とか、それが生活の知恵みたいなところで、自分の生活に役立つものになっていくので、やっぱり同じ体験をした人達と、常に情報交換をしながらやっていくことはすごく大事だし、いろんな状況の方がいらっしゃるので…。
私が最初に家族会に行ってすごくいいなあと思ったのは、皆さん、笑顔で、いろんなお話をされるんですね、内容は本当に悲惨で、すごいことなんだけれども。『もううちの息子なんか、怒って壁にこんな大きな穴あけちゃったのよ』と言って、ケラケラケラと笑われるんですよ。私、その時はもう悲壮感に打ちひしがれていたので、なぜ笑えるんだろうというのが、すごく不思議でしたね、その時。病気の娘がいても、あんなふうに笑って生活できるのなら、ま、いいかなあと思って、ああいうふうになれるのなら、私、家族会に入ろうと思って、すごく素直に家族会に入ってしまったんですけど。
今、家族会の中で活動していると、家族会というものを知っても、近づいてはきても、入るところのハードルが高い方がいらして、入っちゃったら抜けられないんじゃないかとか、いろいろご心配なことがあるようですけども、出入り自由の会ですし、ほんとにいろんな経験をした方がたくさんいらっしゃるから、ぜひぜひ情報を得に来ていただきたいなあというふうに思っています。
で、絶望せずに、病気でそこそこ症状がありながらも、元気で生きている人がたくさんいますから、そういう情報を得ながら前向きに生きていくということを、家族の方も自ら示していくと、ご本人の元気にもつながるかなあというふうに思います。」
「家族の陥りやすい穴と言いますか、それは、この病気の症状が取れなかったらだめというふうに思ってしまうんですよ、どうしても。本人が辛くて症状が出てきて、その症状で振り回されるわけですから、家族は。どうしても症状を取りたいというところに行ってしまうんですけれども、ある程度薬で症状は抑えられますけれども、どうしても残ってしまう症状もあるわけですから、症状を取り去ることだけに意識を集中しないで、ある程度落ち着いたらやっぱり本人がどうしたいのか、どういう生活を望んでいるのか、それを実現するためにはどうしたらいいかというところで、家族が病気から視点をちょっとずらして、本人の『生きる』というところに視点をおいた関わり方をする必要があるのかなあというふうにすごく思いますね。」
「状態の悪い時に、いろんな妄想のことも言ったりする延長上で、ずっと本人を見ていくと、やっぱり病人の本人しか見えなくなってしまうので、やっぱり落ち着いたら、病気の部分はあるんだけれども、本人自身の持っている力とかも一杯あるはずなので、本来の本人の考えていることもうまく汲み取りながら対応していくといいんですけれども。
それはやっぱり家族だけではなかなか難しいので、社会資源を使いながら、どなたか家族以外にも、本人さんがつながれる場所を探す。そこの1つのテーマとしては、今、出かけていかないと、なかなか支援につながれないということがあって、出かけていけないから困っている家族や本人がとても多いので、よくアウトリーチと言いますけれども、医療も支援も家庭に届くシステムというのが、やっぱり急がれるかなというふうに思います。ぜひ、必要としている家庭や本人に情報や支援、医療が届くようなシステムを作り出していって、私もそのためにできることはしていきますけれども、関係者の方、皆さんと力を合わせて、そういうシステムを作っていけたらなというふうに思います。」
「1つは、常に娘の良き理解者・支援者であることに変わりなくいたいなあと思うので、娘が助けてと言った時には、娘のできないことは私が手助けするということは、ずっと続けようと思っています。ただ、あまりお互いに当てにしすぎないという範囲の中でやっていこうというふうに思っていますね。
それともう1つは、すさまじい経験でしたけれども、とても貴重な経験をしてきたので、それを何かの形で役に立てていきたいなということがすごくあるので、これからこの病気と出会う方には、少しでも、その悲惨さを少なくしていただけたらなあというふうに思うので、私が体験してきたことで、これからの方達に役立てることがあれば、どんなことでも情報提供していきたいと思っています。いろんなところに出向いて行ってお話をしたり、あとは家族会の活動の中でできることを探りながら、統合失調症になっても大丈夫な社会を作るということが私の1つ大きな目標でありますので、それに向かってできることをこつこつとやっていけたらなあというふうに思っています。」