「そうですねえ。最初に、娘が訳の分からない混乱状態になった時には、自分の育て方のせいじゃないかとか、何がいけなかったんだろうと、やっぱり原因をどうしても探してしまって、籠もりがちになったんですけども。
当時、私はずっと仕事をしていまして、かなり責任のある立場にあったので、家の中がその状態になった時に、いつ仕事を休まなきゃいけないかとか、いろんなことがありましたので、隠せる状況じゃなかったので、仕事場では、『実は今こんな状況で、ちょっと困っているのよぉ』と、職場の仲間には全部オープンにして、上司にも伝えて、いつなんどき急に家に戻らなきゃいけないことがあるかもしれないので、よろしくお願いしますと。そういうスタートだったので、気持ちの上では隠したいという気持ちがありながらも、やっぱりもう隠していられる現状ではなかったので、隠すということは二の次になっていたというのが実情でした。」
「ありましたよ。それはそれはもうすごい葛藤がありました。でもやっぱり、ちょうど娘と、その時は私の母も同居していて、母の認知症も始まってしまったんですね。で、この家庭状況と仕事を両立させた時に、自分はどうするだろうと考えたら、仕事の代わりは誰かにやってもらえるけれどもこの家庭を何とかするのに代わりはやっぱりいないと思ったら、仕事も続けていった時に、仕事がおざなりになっていくということをイメージした時に、私はそれが嫌だったんですね。やっぱり仕事としてやっていく以上は、仕事に100%責任をもってやっていきたかったし、家庭との両立が無理だったら、やっぱり仕事を、次の人にバトンタッチして、自分は一番大切なものを守っていくというところに軸足を置くしかないなということで、葛藤はありましたけれども、そんなに後悔せずに選択することはできました。
ただ、娘に、『あなたのために仕事を辞めたのよ』ということは言いたくなかったし、私は娘のために仕事を辞めたとは思っていないんですね。自分がやっぱり、自分の人生の選択の中の1つとして、その時期に仕事を辞めるということを選んだというふうに思っているので、決して娘のために仕事を辞めたのではないというふうに考えております。」