「悩みというか、具体的な障害というのがありまして。女の方が、いろんな薬がありますけど、薬物治療を受けていますと生理不順が起きます。まず子どもを、僕らは全然知らないでつくろうとしても、なかなかできないんですよね。で、そのうちにわかって、婦人科なりなんなり、いろんなところに行って検査してもらうとわかるんですが、そしてそれは無排卵生理だと。で、何が影響かと特定するのはすごく難しくて、なかなか薬で無排卵生理が起きていて子どもができないって話は知らないんですよね。うちの統計調査でいっぱい出ているんですけどね、そういうことは。でそのことで、じゃ、(薬を)止めたら、機能がすぐに戻るかというと、そういう問題じゃなくて、一定期間ホルモン療法をして女性の体を元に戻さなきゃいけないんですね。男性の方もインポテンツがあったりして、できないという現象があります。ま、これは要するに生理的に子どもをつくる前の問題ですね。
で、子どもをつくって生活しようっていうにはですね、大きな自分たちの決心が必要なんですね。これは欲しくてできる子どもじゃないとだめなんですね。でないとやはり、あの僕らはある意味では親から欲しくない子どもにされているところがあるわけですね、もしくは社会からですね。で、欲しい子どもでなければいけないから、やはり欲しい子どもという意識があってできることですね。
で、子どもの成長に合わせて自分たちも変わっていくんですねえ。子どもを欲しいと思って、できて、生まれて手にしますね、こうやって。あの、そうですね、普通は出産する分娩室の前で家族で待ちますね。僕は一人だったんですね。一人で待っていました。それでもやっぱよかったですね。で、二人目のときは、やっぱ、一人だったんですね。そのときはもう、分娩室に一緒に入って、ヒーフー、ハーフーやってますけど。だからもう、生命が生まれるってこんな大切なことなんだと思いながら子どもを授かったということですね。
で、このときにね、残酷なことに気がついてですね。実はこの子は、うち2人いるけど三人目の子どもなんですよ。一人目の子どもは稽留(けいりゅう)流産しまして。妊娠初期に飲んで良い薬はないんです。ま、いろんな病院に通っていましたけど。そこで、妊娠するとか、子どもをつくりたいっていっても、その時期に出せない薬を出すお医者さんがあまりにも多すぎます。ですので一人目の女の子は残念ですけども、そういうことがあって、次は気をつけて自分たちで薬をリストダウンして飲めない薬は飲まない、ほとんど。女房は、何も薬を飲まない状態で、私はたくさん飲んでいました。どんな女の人でも妊娠時期には不安定になります。それは精神病者に限らずです。
健康な子どもが生まれたときはすごく安心しました。一人目がそうでしたので。」
「(妻は)普通のいわゆる不安な状態だったんじゃないかなと思いますけど。というのはね、例えばもし妄想があったと、ある人だと思います。そうしたら、現実しか考えないんですよ。例えば子育てでもそうなんですよ。生まれてくる子どものことだけを考えているから、妄想じゃないんですよ、そのことだけを考えるんですよ。子どものことだけを考えるから、他のことを考えないから、現実的な世界しか頭がないんですよね。余計なことを考えないから、子育てはすごく治療的には効果があります。」
「病者同士の結婚の中で、女房も含めて旦那のほうとしたら家庭の再構築っていって、過去、いろんな家庭形態、いやな家庭形態があったわけですよ。自分にとっても、ま、親も含めて。それが新しくつくった家庭でいろんなことが起きるじゃないですか。そうすると昔どうにもならなかった部分が埋まってくるんですよね。あれはなんとも言えずに、自分でも驚くぐらいですね。価値観が変わりますよ。
統計調査の中でね、多いんです、不安だっていう人、ありましたね(図4)。でも、一定の条件さえ満たして、先ほど言ったように妊娠初期に薬を飲まないとか体の調整とかをすればちゃんと産めますし、ちゃんと知識を持って産めば子どももちゃんと育つしね。あと育てるときにですね、これは、どこもみな、ある点似てると思うんですが、子どもがいることによって、人生取り戻せますよ。あの取り戻せないって方いっぱいいるけど、僕もいろんな方を知っていますけど、子どもができて家庭をもっている方は、人生取り戻していますよ。」
図4:子どもがいない理由(既婚者で子どものいない65名 複数回答)
(第1回 精神医療ユーザーアンケート報告書2005年版、ゼンセイネットより)
薬の影響が心配だから | 24 |
親が反対しているから | 20 |
子どもを育てる自信がない | 19 |
特に理由はない | 15 |
遺伝が心配だから | 14 |
兄弟・親戚等が反対しているから | 12 |
子どもをつくらないことが結婚の条件だから | 10 |
年齢的な関係 | 7 |
主治医が反対しているから | 3 |
関係者が反対しているから | 1 |
その他 | 3 |
「(偏見)うーん、学校教育の要するに携わっている人たちですね。例えば、学校、小学校辺りに行きますよね。小学校で児童クラブってあるんですね、放課後クラブって(昔)言いますけど、そういうところに、健康診断書代わりに、もしくは、そのときに頼むという理由で、障害者手帳のコピーを2枚つけて出すんですよね。すると、学校の担当者、こう言うんですよね、それを見て「どのように接していいんでしょうか、普通に接していいんでしょうか」と、子どもじゃなくて親に言うんですよね。まあ、しょうがないなってとこありますね。
で、逆にね、子育てしていて、学校っていうこともあると思うんですけど、うちの子供の話をすると、いつもそういう障害者の中に一緒にいて、僕は3障害の会もやってるんですが、3障害の会の中でそういう子どもと接しているから「何々君こうだよ」って手話やったりですね、普通にしているから、子どもを見ていると、障害なんていうことは社会がつくり上げたことであって、小さいうちから身近に接していたら障害者だとか、そんなこともなくなるのかな、っていうようことを感じますけどね。」
アドバイス
抗精神病薬の女性への影響ですが、抗精神病薬の服用中に、高プロラクチン血症による月経異常 (無月経)、無排卵、乳汁分泌などが生じることがあります。この方は最初の妊娠が稽留流産となったという大変辛い経験をされていらっしゃいます。抗精神病薬の妊娠時の催奇形性(胎児に奇形が起きる、あるいは流産に至る危険性)は明らかではありませんが、動物実験では有害作用が示されており、服薬による利益(効果)が胎児に対する潜在的な危険性よりも大きい場合にのみ、抗精神病薬が使用されます。妊娠を希望されるときは、主治医に十分にご相談ください。