統合失調症と向き合う

体験者の声 医療者・支援者の声 家族の声 私たちの活動紹介 イベント おしらせ
藤枝脩平さん
藤枝脩平さん
(ふじえだ しゅうへい)
1983年生まれ、27歳。大学生(19歳)のときに発症、受診。大学卒業後、就職するがうまくいかず退職し、実家に帰る。その後、就労継続支援B型(非雇用)事業所に勤めるが辞めて、現在は自宅で母親、祖父母とともに暮らしており、祖父母の世話などをしながら毎日を過ごしている。状況に合わせて相談支援センターを利用。
movieImage
<< 1  2  3  4  5  6  7  8  9  10  11  12  13  14  >>
8家出をして北海道へ

「 (2010年の)夏です。当時(就労継続支援)B型事業所の事務員として勤めていまして、その8月頃はなんて言うか、行き詰っていまして…。いろいろと事務員として書類を作ったり、施設長にその書類を提出して許可をもらったり、そういうことが主な仕事なんですけど、自分の作る書類が、『よしこれで大丈夫だ』と思って施設長に見せても、どこか必ず何か違うということで返されまして。そのたびに直して出したらまた違うときて、もういったい何が正しいのか自分では分からなくなってしまって…。なんかもう、『だめだなあ、何をやっても仕事はうまくいかないなあ』という気持ちが強くて。

で、8月の上旬に朝起きても具合が悪くて、仕事に行けなかったりという状態が、お盆休みの前まで続いて。で、お盆休みが明けて、また仕事に行かなきゃならないのかなあと思っていたんですけど、どうせ、施設長が求めるようなちゃんと正しいものが自分には作れないんだというふうに、自分で分かってしまっていて、俺はそういう仕事の責任を果たすことができないんだというふうに感じてしまって、もう、仕事から逃げたいという気持ちが出てきました。それで、『じゃあ、もう遠くへ逃げよう』と思って、お盆休みの明けた次の日から家出をしました。」

●“べてるの家”を探して

「“べてるの家”がある北海道の浦河(うらかわ)町まで行ってきました。

最初は、遠くへ行きたいと思っていて、そのついでに自殺しようかなとも考えていたんです。ただ、そんなに自殺しようという気持ちは強くなくて、じゃあ、どこに行こうかなと思ったら、まず北海道には行ったことがなかった。で、北海道には“べてるの家”という精神障害の人達が、生き生きしているというのかな、注目されているところがあったので、まずそこに行って、今の自分の状態をすべて暴露して楽になりたいと思って、浦河へ行きました。

それが、“べてるの家”がどこにあるのか分からなくて、最初は、“カフェぶらぶら”に行ってきました。そこで、店員さんとちょっとお話をしたんですけど。どこから来たんですか、どうしてこんな遠くまで来たんですかと聞かれて、『実は仕事が嫌になって逃げてきたんです、(私は)統合失調症です』と言ったら、ああそうなんですか、ま、ゆっくりしていってくださいね、というふうに、なんか軽く受け流されてしまって。まあ、自分の悩みってそんなもんかなあというような感じを受けて、“カフェぶらぶら”をあとにしました。

そのあとは、じゃあ、“べてるの家”を探しに行こうと思いまして、取りあえず、町内を歩き回って、やっとのことで“べてるの家”を見つけて、『ああ、ここかあ』と思って。取りあえず、ここまできたから、ま、OKにしようということで、旅の目的を果たした気になって、すぐに電車で浦河を離れました。

“べてるの家”の近辺がとても静かなところだったので、生活している人もいるから、あまり邪魔しちゃいけないなと思って、取りあえず外から眺めるだけにしていました。中に入ればまた印象が違ったと思うんですけど、ま、こんな感じなのかなあと、普通に、生活に溶け込んでいるんだなということが分かりました。」

べてるの家:1984年に設立された北海道浦河町にある精神障害等をかかえた当事者の地域活動拠点です。社会福祉法人浦河べてるの家、有限会社福祉ショップべてるなどの活動があり、総体として「べてる」と呼ばれています。そこで暮らす当事者達にとっては、生活共同体、働く場としての共同体、ケアの共同体という3つの性格を有しており、100名以上の当事者が地域で暮らしています。 (べてるねっとより)
カフェぶらぶら:べてるの家が運営しているカフェ。喫茶のほか手作り製品も販売している。
<< 1  2  3  4  5  6  7  8  9  10  11  12  13  14  >>