統合失調症と向き合う

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津田敏正さん
津田敏正さん
(つだ としまさ)
1979年生まれ、33歳(収録時)。23歳のときに発症し精神科を受診。子どもの頃から建築・不動産業に関心があり、29歳で宅建(宅地建物取引業者)の資格を取得。現在は、特例子会社で働いている。1人暮らし。障害者手帳3級。
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5海外研修に行く
Q.作業所へ行ったことで活動は広がりましたか

「転機と言うか、ちょうど2005年にうちの作業所は(に)、きょうされん、共同作業所全国連絡会という、作業所のいくつか、知的(障害)とか身体(障害)も含めた作業所を束ねる団体があるのですが、そこが不定期に海外研修をやっていて、その年は精神(障害)をターゲットにした海外研修をしようという話になって、『カナダに海外研修に行きませんか』みたいな貼紙が、作業所にも貼られました。

でも、僕は他人事だったんですね。全然、英語などもしゃべれないですし、まず2週間もこの病気をして行って、そんなことができるわけがないしみたいに思っていたのですけど、うちの施設長が全員呼んで、いろいろ『こういうことがあります、ああいうことが(あります)、カナダのカルガリーではこういうことをやってみたい』といった話をしていて…。

僕は普通に聞いていたつもりだったのですけど、あとになって施設長から、『津田さん、すごく熱心に聞いていたみたいだから、ちょっと行ってみない?』と直接言われて…。でもそんなお金ないし、そんな急に言われても。お金もかなりかかりますし、親に相談してからにさせてくれませんかと逃げたんですよ。一応親に聞いてみたら、『勉強になるんだから、いいんじゃない。出世払いにしておいてあげるわよ』みたいな話をされて、じゃあ、ちょっとトライしてみるかみたいなことで行ったのが2005年の11月ですね。

それがある意味、あとから考えると転機だったなと思います。」

Q.海外研修に行ってみてどうでしたか

「それ(行ったこと)自体は自分の中で何かがあるというわけではないのですけども。行ってとにかくいろんな施設を見て…、観光などもして、片言の英語で当事者の方とも会いました。で、当時知らなかったアクトACTとか、今日本でも(注目の)IPSみたいなことを見て、『はあ、すごいな』と思ったり。あと、1人の当事者の方が僕をすごく気に入ってくれたみたいで、ジェスチャーと片言の英語で、『これは贈り物だ』みたいに言ってくれた人がいたり…。

(カナダに)行ったこと自体は、自信には直接はつながらなかったのですけど、やっぱり自分は病気ということだったら…、今思うと、当時やっぱり自分の中では『転んでもタダでは起きないぞ』みたいなことが、深層心理の中にあったのではないかと思うんですよ。(僕が)今あるのは、あそこで断らないで行ったお陰だと思うから。」

ACT(Assertive Community Treatment積極的地域治療):重度で長期の精神疾患をもつ人を対象とし、病院・診療所ではなく積極的に地域に出て、保健・医療・福祉が緊密に連携した治療・支援を、医師、看護師、ソーシャルワーカーなど多職種の専門職によって、生活の場に届けることを目標にした訪問型専門治療プログラムのひとつ。アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリアなどで普及したあと、2003年から国内いくつかの地域で試行的に行われている。(精神科医:伊勢田堯)
IPS(Individual Placement and Support):1990年代前半に米国でACTプログラムが展開する中で生まれた、就労支援に焦点を当て開発されたプログラム。科学的に効果的であると証明された事実や根拠に基づいた援助プログラムの1つで、日本語では「個別職業紹介とサポートによる援助付き雇用」などと訳されることが多い。IPSの最終目標はリカバリー。
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