統合失調症と向き合う

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A.T.さん
M.H.さん
1968年生まれ、44歳(収録時)。一人暮らしをしているが、支え合うパートナーがいる。大学卒業後、就職したが、23歳の時に誇大妄想が始まり、入院治療を受ける。就職して2年後に退職し、大学院(修士課程)に通う。その後、治療に専念するため就労したりしなかったりとなり、現在は2つの作業所に通いながら、ときに親の世話をするなどで日々の生活を送っている。パートナーの存在や、はんこを作る、小説を書く、絵を描くといった日々の暮らしの中で行っている事柄が支えになっているという。
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5症状の安定
Q.症状が安定してきたと思えたのはいつ頃ですか

「うーん…、時が治したとしか言いようがないですね、薬物と。

波が立ちながら、その波立ちのピークがずーっと治まっていって、それで静かな波打ちになったという感じですね。10年ぐらい(前)ですかね。最終的に、4つ目の病院に再々入院して、出たあとですか。」

Q.薬は変わりましたか

「最初の主治医が処方した薬と、4番目の入院の時とは明らかに薬剤が変わっていますね。4番目は今ですけど、サイレーステグレトールアキネトンリスパダール。量もほとんど変わっていないです。」

サイレース(フルニトラゼパム):睡眠導入薬
テグレトール(カルバマゼピン):気分安定薬
アキネトン(ビペリデン塩酸塩):抗パーキンソン病薬
リスパダール(リスペリドン):非定型抗精神病薬

Q.薬の副作用はありますか

「ありますよ。男性機能に障害が。いや、やりにくいですね、とても。ま、どうしようもないので…。私が言わないと、たぶんそういうことがあることすらも分からないだろうと思いまして、はっきり言ったんですよ。こういう障害が出ているから、それは何とかしてくださいと。

私が今かかっている主治医から数えて2人前ですね。2人目の主治医が調薬した薬剤配分で、それに大きく病状に合わせて私のリクエストに応じて調薬して、今になっているようですね。」

Q.自分に合う薬が見つかるまでの状況は?

「そりゃもう大変ですよね。主に入院治療の時ですかね、著しく薬剤が変わるんですよね。だいたい1週間ぐらいのスパンなのですが、1週間投与してみて、効果が見られなかったり悪化すると思ったら、違う薬剤を試すという…。だから1年かかったですかね。4番目の病院に入院した一番最初の入院が1年。」

Q.現在、症状が悪化することはありますか

「見事にないです。なんて言うんですかね、精神的なアリ地獄と言うんですか?すり鉢と言うんですか?そういうところに心を持っていかないようにと。そういうアリ地獄に落ち込んでいる人間を何人も見ましたので。

まず目つきが、そういう目になります。すぐに分かります。統合失調症の人に限らないです。人間というのは、どうもそういう精神のアリ地獄に落ち込むと、そういう目になるようですよ。

例えば晴らされない想いとか、『こうしたい』という願いが叶わないとか、『なぜ私はこんな身の上なのか』とか、『なぜ私はこんな生まれつきになってしまったんだ』とか…。そんなものの渦巻いているマイナスの連鎖の渦というのは、ひどいことになりますから。」

Q.アリ地獄に入ってしまったことがあるのでしょうか

「なりかけました。29歳ぐらいの時ですかね。ものすごく攻撃的になります。その攻撃衝動というのは内に向かうか外に向かうかだけで、ま、人によって内に向かったり外に向かったりですか。(僕は)外です。

出てくるしかないですからね、アリ地獄の魔の手を断ち切って。きっかけは人によりますよ。」

Q.あなたがアリ地獄に落ちなかったのはなぜですか

「パートナーの力ですかね。再入院して、出てきてからデイケアに通ったんです。そこで知り合いました。

パートナーは、私が最初に出会った頃というのは、『こんな人、世の中におるのかい』というような感じの人だったんですよ。なんて言うのか、この人というのは、人とか世の中の見方というのが、私と180度違うなと思ったんですよ。私はどちらかと言えば、世の中の事柄とかは、割と見に行って見に行って、聞きに行って聞きに行って、自分で体験して体験して、見たことしか信用しないのですが、私のパートナーは、自分の中に確固たる何かがあるんでしょうね、きっと。だから、どんな状況であろうと信じることができるんですね、自分をね。そういう人間というのは、アリ地獄に落ちないですよ。

『これはもしかしたら』と。こういう態度というのは、がんばれば私もできるかもしれないなと思ったんですよ。その結果、うそのように回復したという…。それに時の流れで効いてくる、時間療法と言うんですか、そういうものと薬物が体に合ってずーっと症状を抑えるということ。それと、平穏な生活ですよね。そういったものが手に入って、どうにかこうにか、今の状態になったのではないかと思っています。」

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