「自分の中で当事者性をなかったことにしてしまおうみたいな、そんな心の動きがあって。もう、自分は支援者だよぉみたいな……。すごく失礼な話だなぁと、今にしては思うのですけど。『自分は病気じゃないんだ』みたいに自分で自分をそう納得させようとしてしまったのですね。
そんな自分がいて、(そうして)きたのですけれども、去年(2016年)、たまたま、今お付き合いしている彼女さんも精神疾患を持っているPSW(精神保健福祉士)なのですよ。で、『あ、こういう人って他にもいるんだ』と。その彼女さんは、病気のことをオープンにして精神保健福祉士として働いているのですね。ちょっと思うところがあって、『リカバリー全国フォーラム』(NPO法人コンボ主催)にちょっと行ってみようかなぁと思って行ったのです、去年(2016年)。
そこでその彼女さんと初めて会うのですけれども。その場に行って、当事者のすごいパワーみたいなものを感じたのですね。で、なんか一気に自分で自分を当事者じゃないんだと思おうとしていた自分がすごく恥ずかしくなってしまって……。自分で自分に偏見を持っていたんだなぁとか、自分がいちばん偏見を病気の人に抱いていたのだなと、恥ずかしくなってしまったのですね。
それがきっかけで、その後、彼女さんとお付き合いすることになるのですけど。交流が始まって、当事者とはとか、専門職とはみたいなやりとりをずっとしていて。で、自分の中でちょっと意識が変わってきたのですね。で、自分の当事者性というものも支援に活かせるものなんだぁみたいに思って、それで、今の職場に転職したという感じですかね。自分の当事者性も武器になるのではないのかなということを感じ始めて……。」
「地域も変わったのですね、職場のエリアも変わったので。その前の地域ではもう支援者として、しがらみと言ったらちょっと違うのかも知れないですけど、立場もあったので、『新たな自分を見つける』ではないですけど、新たにスタートを切りたいなぁみたいなところもありましたね。
今、利用者さんと接する上で、自分もオープンに、病気だよというスタンス、自分の心の持ちようはそうですけど、ただ、支援者というか、上司とかがあまり積極的にそれを活かしてくださいみたいには言ってこないので、そこでは正直……やはり、今も自分の当事者性というのは活かせていないのかなというところで葛藤みたいなものはありますけど。
だから自分の中では、これ(今回のウエブ掲載)をきっかけにしてではないですけど、決意表明したいなぁという思いもちょっとあったのですよ。楽になりたかったし、なりたいという気持ちが今、常にありますね。そこはちょっとラインを超えてみないと分からない部分というのはあるかも知れないですね。」
「そうですね。オープンかクローズかとか、当事者か支援者かというところ、どちらかの立場を取らなければいけないと思っていた自分に対して、『どっちでもいいんじゃない?どっちもあっていいんじゃない?』という新たな気づきを与えてくれたという部分ではすごく大きかったですね。本当に感謝しています。」
「彼女ですかねぇ。そうですね。まあ、母親も信頼していますけど。
彼女さんが、当事者の仲間がすごくいっぱいいるのですね。で、その友達に僕も会わせてくれるのですよ。だからようやっとそこで、“本当の仲間”ではないけど、そういうつながりが今、できつつあるので、すごく心地いいですね。
あとは、僕の大学時代から、僕、関西の大学に行っていたのですけど、何人かこちらにすごく仲の良かった友達が出てきているので、そういう仲間とは、ずっと大学卒業以来、月に1回とか会う時は会って、細く長く付き合いができていますね。
でも、彼女によって知り合えているいわゆる当事者の仲間ですとか、当事者ではないにしても、彼女の友達の友達みたいなところでちょっと交友関係が増えているので、そこはすごく、今、ありがたいですね。」