統合失調症と向き合う

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瀬戸崇史さん
瀬戸崇史さん
(せと たかふみ)
1972年生まれの44歳(収録時)。26歳の時に眠れなくなり、心療内科を受診し、その後精神科を受診する。入院の経験は5〜6回。現在は、就労継続支援B型事業所で支援員として、週5日フルタイムで働いている。一人暮らし。以前は障害年金を受給していたが、現在は無い。
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10メッセージ
Q.同じ病の方へメッセージをお願いします

「これはいちばん言いたいのですけど。『精神疾患があるよ、病気があるよというだけで、自分の人生を限定してしまうのは、ちょっともったいないんじゃない』というのはすごく伝えたいですね。

別に僕が今普通に、あえて普通にと言ってしまいますけど、働けているから、みんなもそうなれるよではないですけど、やる前に、やりたいこととか、やれることにくる、その可能性を病気とか精神疾患とか障害ということで、自分で枠を作ってしまうことはないのではないのかなぁと。本当にやりたいことは何でもやってもいいし、やってみたらいいと思うのです。

ただ、もちろんそれに伴って、それなりに辛い思いもしなければいけないこととかもあると思うのですけど。でも、それって、普通に生きている人だってそうじゃないですか?病気があろうとなかろうと、やりたいことをやるためには、それなりの苦労も経験しなければいけないよねと。それは誰でも一緒だなと思うので。

そこで失敗を重ねても、ひとつひとつちょっとずつ重ねていけば、なんとなーく、自分なりのいい生き方というのはできてくるのではないのかなというのは、ほんと伝えたいというか……、僕は、そう思っています。」

Q.今につながったターニングポイントは?

「ターニングポイント……、やはり自分の中では資格が取れたということが大きかったですかね。その辺ですかね。やはり資格を取れば、取ることで変われるんだとか、それで変わるんだみたいな意識はすごくありましたので。

福祉職の魅力……、自分が役に立てているということが目に見えるのが嬉しいといいますか。ま、人を救おうまで僕は思ってはいないですけれども、なんか、その人がちょっと元気になるのとか見られると、なんか自分が嬉しいのですよね。だから、結局は自分の為でもあるのかなぁというか、そんな思いもありますね。そこがいちばん魅力ですかね。

だからそんなに、日本の福祉をとかそういう大きいことは考えていなくて。ただ単に、たぶん自分が幸せになりたいのでしょうね、人の役に立てたということで。そこが根っこのような気がします。」

Q.現在のご自身をどのように思いますか

「今、結構、自分のことを好きですよ。今回インタビュー協力をさせていただくことで、自分の中の、自分で自分を欺いているような感覚というのはこれできれいさっぱりなくなるような気もしているし。そうすると更に楽に生きられるのではないのかなと思っていて。

そうするとさっきまでね、ちょっとお話に出たように、支援者か当事者かみたいなところで悩んでいた、どちらかに属さなきゃいけないみたいなところで結構ガチガチになっていた自分の考えというのも柔らかくなるのではないのかなぁみたいな、そのきっかけにもしたいなという思いがあります。」

Q.ご家族へのメッセージをお願いします

「母親にはすごく感謝しているのですね。母親って、自分がどんな状況にあっても、自分のことを見守ってくれるような関わりをしてくれたのですね。母親自体も家族会に参加してくれたり、病気に対する勉強を結構してくれていて。家族会主催の勉強会とか、講演会に自分のことも結構連れ出してくれたのですね。その当時は、ほんと、自分は孤独だとか孤立していると思っていたから、そういう場で、『あ、自分だけじゃないんだ』ということを見せてくれたのも、すごく助かっていますし。

あとちょっとエピソード的なことで言うと、ある時母親が知り合いと話をしていたのですね。その場に僕もいたのですよ。で、その知り合いの方が、何気なしに、ま、社交辞令的にですよね、『いい息子さんですね』と、母親に言ったのです。そしたら、さらっと母親が、『ええ、私の宝物ですから』と、ほんとさりげなく言ったのですよ。その当時、自分は、自分をゴミ屑にもならないような人間だと思っていたから、そんな自分でも価値を認めてくれる人がいるんだって……。

それは本当に嬉しかったですね。家族が見ていてくれたということ。僕はそういう母親が、指示的でもなく、指導的でもなく、遠くから、なんかあったら助けるよぉみたいな感じで見守ってくれたので。そういう感じで接してもらえたのが僕はありがたかったですね。だから、他の人も、必ずしもそうかとは分からないですけれども、そういう関わりって結構、ありがたいのかなぁとは思いますね。」

Q.医療従事者へメッセージがあれば

「医療職の方は、やはりどうしても、病気を治療することがいちばん最優先のことだと思うのですけれども。もちろん、それは、そういう専門職だから当然だと思うのですけど、ただ、病気がなくなればいいよねとか症状が軽くなればいいよねぇではなくて、症状がなくなったあと、じゃあ、その人がどうやって生きてくために、どういう治療をしていくかというか、その人患者さんなり、当事者なりの病気がなくなったあとの生活というところももうちょっとフォローしてもらったりとか見てもらって、治療というものをやってもらえたら、すごく助かるかなぁとは思います。」

Q.あなたが考える良い病院とは?

「親身になって対応してくれるワーカーさんがいる病院とつながれれば、すごくいいのかな。ちょっと支援者的な目線も入ってしまうのですけど。

と言うのは、やはり、僕もすごく信頼できるワーカーさんに病院で出会って。そのワーカーさんに伝えたことで、ワーカーさんが主治医に伝えてくれて、じゃ、こういう診療方針でやっていこうかとか……。そのワーカーさんは、すごく熱心に関わってくれて、家族教室とかも開いてくれたり。今の病院ですね。もうお辞めになられたのですけど。やはりそのワーカーさんにも、自分のことを安心して任せられるなと思ったのと、あとやはり、そういう結構志の高いワーカーさんは、探せばいるので。

僕は、PSW(精神保健福祉士)として関わりのあるワーカーさんの中にも、自分、患者としてもこのワーカーさんに関わってほしいなと思えるワーカーはいっぱいいるので、そういうことも視野に入れて、病院探しというのを考えてもいいのかなと、情報としてお伝えできればなと思います。

だいたい、それなりの病院だと相談室があると思うのですね。だから、最初に医療につながろうと思うと、たぶん相談室のワーカーさんが出てくると思うのですよ。初診で行くとすると、その対応で判断するというのも、結構有効かなぁとか思いますね。」

Q.インタビューにご協力くださった理由をお聞かせください

「今までの話の流れで、自分自身が、病気というものとか、精神疾患とか、精神障害というものに偏見を持っていた部分がすごくあるのではないかと感じているのですね。そういう自分に、けじめをつけて、新たなステージに向かいたい、その決意表明みたいなのにしたいなというところが、いちばん大きいですね。

だから、まあまあ、その時々で、なんかそういうふうに偏見を思うようになってしまった自分というのを否定するつもりは全然ないのですけれども、ただ、今後、自分の精神疾患の経験というものも、経験というか、今現在も抱えている精神疾患というものも、自分の支援という仕事を続けていく中での武器にしていきたいなぁというか、そういう道を探していきたいなぁというところで、協力させていただきましたね。

あとはさきほどもメッセージのところで伝えましたけど、『病気があってもなくても、それで可能性を縮めてしまうのはもったいないんじゃない?』ということを、別に僕がサクセスストーリーを歩んできたよとか、だからすごいでしょみたいなそういう思いは全然なくて、『可能性を諦めてしまうのはもったいないんじゃない?』ということは伝えたいなという思いがありますね。」

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