「(人工肛門になってから)もう8年経ちました。まあ100%快適とは言えませんね。やはり健常者の方が自然にトイレに行って排便されるのとは全く違いますからね。まさかこんなところで、こんなふうに排便作用が起きるとは思わないようなところで起きたりする、ということがあったわけです。ひとつひとつそうした経験を積んで、食べる量とか、食べる物の中味(肉、野菜、脂っこいもの、塩辛いもの)によって自分がどうなるかということを自覚できるまで、やはり3年ぐらいかかりました。ですからその間は、極端なことをいうとほとんど東京の外へ出なかったです。やっぱりいろいろ慎重に生活していました。その間、可哀相だったのは家内で、それまで旅行したりしていましたが、3年ぐらいはいっさいしませんでした。」
「私は病気したということをそんなに多くの人に告知していないのです。知っているのは身内の何人かしかいません。見た限りでは、私が直腸がんの手術をして人工肛門であるとは、誰もわからない。それこそ一日中一緒に行動をともにしていてもわからないですから、敢えてそういう方には告知しないのです。
それほど多くの人とおつき合いしているわけではないのですが、私が病気したということを全員がわかると、相当お見舞いだのなんだのといって、いろんな人にご心配をかけるのです。5〜6回手術したことがあるとご説明しましたけど、以前も入院していますと、もう入れ替わり立ち替わり人が訪ねて来て困ったことがあるのです。ですから、そういうことで敢えて皆さんにご迷惑をお掛けしたくないということがひとつ。
それともうひとつは、やはり病気しているということをあまり知られたくないということです。病気しているというマイナスのイメージを多くの人にもたれるのがいやだな・・・というところがありまして。このふたつの理由ですね。」